A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (358)
第356話 超魔法
俺は今週ずっと『ドラグナー』と『ゲートキーパー』に時間を費やしていたが、そのせいで全く収入が途切れてしまっていた。
ゴブリンの魔核1個得るのにスライムの魔核1個とバレット1個必要なのでほぼ等価交換に近い状態が続いており、狙いを外した場合は完全にマイナス状態になってしまっていた。
本当はもっと割の良い下層に行けば良いのだが、余裕を持って検証するには2階層までが望ましかった。
『ドラグナー』の扱いには大分慣れて来たが遠距離で高速移動する敵にはまだ難しいかもしれない。
思った以上に反動があるので色々試した結果、少し窮屈だが肘をナイトブリンガーの脇に当てて固定した状態で撃つのが1番安定していた。
それと同時にバルザードの訓練も行った。『ドラグナー』を右手で扱うので必然的にバルザードを左手に持つ事になるが、左手1本で扱うのに慣れが必要だった。
ステータスの恩恵で左手で扱う事自体は問題なかったが、今までの右手のように自由自在と言うわけにはいかなかったので、実戦で使えるように練習を重ねた。
『ゲートキーパー』は階層のどこにいても各階の入り口迄行く事が出来るので、1階層の先に進んで誰も居ない場所から発動することにしている。
もし転移先で他の探索者に出会ってしまったら、今の所顔を見られ無いように逃げ出すか、完全にシラを切り通すしか無い。
土曜日になりメンバーと合流してから『ドラグナー』の説明と『ゲートキーパー』の検証結果を知らせておいた。
『ドラグナー』に関しては概ね好評だったような気がする。
そして14階層に再突入しようと思うが、今日の最大の問題はヒカリンの『ウォーターキューブ』だ。
今の所水汲みにしか使えないこの魔法をどうにか戦力にしてあげたい。
実は俺には秘策があった。
ヒントは俺が小学生の低学年の時に放送されていたアニメだ。確か原作は随分前の作品だった記憶があるが当時リメイクされて特に小学生に人気があった。
そこでは主要キャラの魔法使いが水と炎を融合して、超魔法みたいなのを生み出していた記憶がある。
俺は熟考した結果これしか無いと思えた。
ただ問題はアニメでは右手と左手にそれぞれ属性の違う魔法を同時に発現させていた気がするそんな事が可能かどうかやってみないと分からない。
「ヒカリン『ウォーターキューブ』なんだけど、俺なりに考えたんだ。『ウォーターキューブ』と『ファイアボルト』を融合して超魔法に進化させられないかと思うんだけど」
「海斗、なんか昔そんなアニメがあった気がするんだけど」
「どうやってやるのですか?」
「右手に『ウォーターキューブ』を左手に『ファイアボルト』を発動させて融合するんだ」
敵と出会う前に練習する事になり、まずは2階層に飛んでからやってみる事にしたが、俺の安直な考えは直ぐに頓挫してしまう事となった。
まず『ファイアボルト』をその場に留まらせる事が出来なかった。
基本、射出型の様でスピード調整はできるものの手の平の上に止まらせる事が出来なかった。逆に『ウォーターキューブ』を出現後移動させる事も出来なかった。
「アニメみたいには上手くいかないな〜」
「やっぱりアニメだからだったのね」
手の平で融合するのは無理だったのですぐに次善策を考える。
ゴブリンを発見して、ゆっくり試す為にシルに『鉄壁の乙女』を発動してもらってから、ゴブリンに向けて『ウォーターキューブ』を発動してもらった。
「よしヒカリンいまだ!」
ヒカリンに先に発動させた水の塊に向けて『ファイアボルト』を放ってもらった。
「いきます『ファイアボルト』」
ヒカリンの放った炎雷が一直線に飛んでいき水の塊に突き刺さった。
衝突の瞬間、大量の水蒸気が上がり次の瞬間
「ドガァアアア〜ン」
『鉄壁の乙女』越しにも熱気が伝わって来る。
俺の思いつきは融合による超魔法では無く、なぜか強烈な爆発を起こしてしまった。