A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (360)
第358話 ルシール
俺は今14階層を探索している。
「ご主人様、モンスター2体です。ご注意を」
「それじゃあもう一度『楽園の泉』を頼む」
「わかりました。我が忠実なる眷属よここに顕現せよ『楽園の泉』」
先程と同じ聖句を唱えると、淡い光と共にルシールが現れた。
「ルシール、敵が現れたら殲滅するのです」
「わかりました」
「そういえばシル、ルシールがいる間も普通に動けてるけど何か制約は無いのか?」
「はい。ルシールが居ても私も普通に動けるので戦闘に加わる事が可能です」
このスキルで1つ心配だったのが『鉄壁の乙女』や『戦乙女の歌』の様に発動時に他の行動に制限がかかるのでは無いかという事だった。
いくらルシールを召喚出来たところでシルが動けなくなったら本末転倒だ。
「それじゃあ、敵も2体だしシルとルシールでお願いしてもいいか?」
「かしこまりました」
すぐにホブゴブリン2体が現れて交戦状態に入った。
ホブゴブリンの大きさとルシールの大きさを比べると、とても勝てそうには見え無いが大丈夫だろうか?
「ルシール大丈夫か?俺が替わろうか?」
「大丈夫です。任せて下さい」
ルシールは女性なので例えは悪いかもしれないが、まさに一寸法師状態で鬼と小人だ。
一寸法師は確か針の刀を持っていたと思うがルシールは特に何も持っていない。
どうやって戦うのだろうか?
「それではルシールいきますよ」
「わかりました。シルフィー様」
ホブゴブリン2体がこちらに向かって走ってきたが、明らかにルシールを目掛けてやって来ている。
小さなルシールを与し易いと思ったのだろう。2体が武器を携えてルシールに迫ろうとしているが、当のルシールは全く焦っていない。
「やはりモンスターとは下品な生き物ですね。お還りください『エレメンタルブラスト』」
ルシールがスキルを発動した瞬間、ホブゴブリンの一体が突風で巻き上げられ、そのままダンジョンの天井に衝突してから急速に落下してロストした。
「ルシールやりますね。私も負けられません『神の雷撃』」
今度はシルの雷撃が残ったホブゴブリンに落ちて一瞬で消え去ってしまった。
どうやらシルはルシールが居ても動けるだけで無く、スキルも使用できる様なので、単純にパーティの攻撃力と手数が1人分増えた様なものだ。
それにルシールのスキルも強烈だ。
てっきりスキルも小人サイズなのかと思ったら、全くそんな事は無かった。普通に俺のスキルよりも断然破壊力がある。
「ルシールすごいな。その大きさであの威力は反則級だな」
「ありがとうございます。これでも天使ですから」
確かに小さいだけで人類を超越した天使なのだからこのぐらいは当たり前かもしれない。
しばらくするとまたルシールが消えてしまった。
「シル、召喚出来るのはルシールだけか?」
「はい、今の私ではルシールだけの様です。レベルが上がっていけば他の眷属も喚び出せる様になると思います」
「ちなみに1回呼び出すのにMPはどのぐらい必要なんだ?」
「そうですね。確認したところMP20が必要のようです」
「20!?」
流石味方が1人増えるという破格のスキルだけあって消費するMPが半端では無い。
俺とかのMP量だと一瞬で底をついてしまいそうだ。
これでレベルアップして複数喚べる様になっても時間制限のあるスキルなので、そうそう連発できる様な代物でも無さそうだ。
いずれにしてもヒカリンの水蒸気爆発スキルと合わせて大幅にパーティの火力が上がったのは間違い無さそうだ。
逢いたくは無いが、またそのうち遭遇するであろう悪魔に対抗する手段が増えた事は歓迎すべき事なので、今後は使い所を訓練していきたい。