A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (361)
第359話 黒翼
俺は今14階層を進んでいる。
事前の情報通り、敵モンスターの出現頻度が高い様で今日だけで既に4回程交戦している。
「まあ、魔核を回収できるからいいんだけど、あんまり無駄撃ちは出来ないな」
「そうですね『楽園の泉』は、この階層では使い辛いですね」
「代わりにわたしが活躍してやるから安心しろ」
初めのホブゴブリンに対して『楽園の泉』を使用して有用性を確認したものの、MP使用量の多さからそれ以降の戦闘には使用できていない。
ヒカリンの水蒸気爆発コンボも1度使用はしてみたが、こちらも2発分のMPを消費する上にタイミングが難しいので、敵が密集した状態などで使用するのが良さそうだった。
「そうだなルシェ頼んだぞ」
「言われなくてもやるけど、いつ使えばいいんだ?わたしの新しいスキル」
「…………………」
なんだ?ルシェの新しいスキル?
「次使っていいのか?」
「ああ、もちろんだ。頼んだぞ!ルシェ!」
ああ、またやってしまった…………
シルの新しいスキルの事も頭から飛んでいたが、ルシェもだった………
やばい。相当に因果律の話と自分の事で頭がいっぱいになってしまっていた。
大丈夫だ。まだ気取られてはいない。堂々としていれば大丈夫だ。
「海斗さん、もしかして忘れてたりしました?」
「えっ?そ、そんな事は無いよ」
「海斗まさか忘れてたのか?すぐ試す様に言って来ないから不思議だったんだ。シルのを忘れてたからわたしまで忘れる事は無いだろうと信じてたのに………」
なんだ?ルシェが妙にしおらしい。そんなにショックだったのか?
「…………ごめん。俺が悪かった」
「謝るだけか?」
「………魔核?を欲しいのか?」
「欲しいのか?何かおかしいな〜」
「わかったよ、俺が悪かったよ。魔核を5個で許してくれ」
「まあ、今回だけだぞ。ふふっ」
やはりこいつがしおらしいなんて事がある訳がなかったが、全て俺が悪いので今回は魔核5個で許してもらう。
しばらく歩くと醜悪な3本角の生えた豚モンスターであるバジッドオークが3体現れた。
普通のオークと違い立派な角が3本生えているのが特徴で、パワーと耐久力が増している。
モンスターの見た目は悪いが角は外国のカブトムシの様でカッコいいので何となくアンバランスな印象が強い。
「3体ともわたしがやっていいのか?」
「1人で大丈夫か?3体だぞ」
「誰に言ってるんだよ。当たり前だろ30体でも大丈夫だぞ」
「わかったよ。それじゃあ頼んだぞ」
スタンピードの時を除き、1人で複数の敵を相手にする事はあまり無かったがルシェの事なので多分問題ないだろう。
「は〜っ。新しいスキルのお披露目がお前達の様な醜悪なモンスターとは……『黒翼の風』」
ルシェが新しいスキルを発動すると空中に黒いもやの様な物が発生して突風を伴ってバジッドオークを包み込んだ。
黒いもやが包み込んだ瞬間にバジッドオークの全身は切り刻まれて消えてしまった。
「あ〜1発じゃ無理だった。お前らは、散らばらずにまとめてかかってくればいいんだ『黒翼の風』」
再び黒いモヤの様なものが現れて今度はバジッドオーク2体を包み込み2体共一瞬で切り刻んでしまった。
ルシールのスキルも風系のスキルだった。ルシェのも同じ風系には違いないが完全に方向性が異なると言うかルシェのスキルが断然エゲツない。
一瞬で切り刻まれる様は正に一瞬でミンチだ。モンスターとは言え余り見たいものではないが、この威力と方向性がルシェの悪魔たらしめる所以だろう。
「ふふふ、どうだった?」
「ああ、さすがだな」
「それだけ?」
「凄かったよ」
「ふふっ」
パーティ全体の火力とレベルがアップしたおかげで14階層の探索は思った以上に順調に進んでいる。