A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (373)
第371話 お礼
俺は増殖したゴブリンを倒す事に成功した。
増殖するモンスターなんか初めてだったので驚いたが、もう少し上位のモンスターであれば結構厳しかったかもしれない。
「大丈夫ですか?」
襲われていた先行の6人パーティに声をかける。
「あ、ああ、助かったよ。本当にありがとう。もうダメかと思ったよ。まさかこのタイミングで助けに来てくれるとは夢にも思わなかったから、なんと言っていいか」
「こちらもたまたま通りかかっただけですから気にしないでください。怪我とか大丈夫ですか?」
「お陰さまで、うちのパーティメンバーに大きな怪我は無いよ」
「そうですか。それじゃあ俺達はこれで」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、命を救われたのに何もお礼をしないわけにはいかない」
「別にお礼なんかいらないですよ」
相手のリーダーっぽい男が声をかけてくる。俺よりは年上に見えるが正直お礼なんかいらないので、早くこの場を去りたい。
ただでさえ目立つパーティ構成なので早く去って無かった事にしてしまいたい。
「いやそういうわけにはいかない。俺達が探索者仲間の笑い者になってしまう。どうしてもお礼をさせてもらいたい」
「う〜ん………」
「それじゃあ、情報をください。さっきの増殖ゴブリンの情報です」
ここでミクが助け舟を出してくれた。確かにあのゴブリンには興味があるし今後出会った時に参考になる情報はあるに越した事は無い。
「情報と言っても、俺達もよくわからないんだけど、最初遭遇した時は3体だったんだ。俺らはもう少しで15階層まで到達する予定だから、そこそこ14階層にも慣れてる。だからホブゴブリン3体はそれほど問題では無いという認識で戦ったんだが、1体倒して気がつくとまた3体になっていて、また1体倒すと今度は4体になっていって、段々数が増えていったんだ。5〜6体まではある程度対応できてたんだけど、気がついたら10体を超えていて、攻撃を防ぐので精一杯だったところを君たちに助けられたんだ」
「それじゃあ、特別に変わったところとか無かったんですか?」
「はっきりとはわからないけど、増殖したやつは少しだけ肌の色が違う気がする。だけどどうやって増殖したのかはわからないんだ。気がついたら増えてる感じだったから」
その感覚はよく分かる。俺がさっき戦った時もそんな感じで気がついたらそこにいた。
「今までに増殖するモンスターに出会った事はありますか?」
「いや、初めてだ。それに俺らのグループでも、もっと先まで行ってるパーティもあるけど、こんなのは聞いた事が無い」
グループ……サークルの事か。
「じゃあ、見分けとかは、ほぼつかないって事ですかね」
「交戦して初めて分かる感じだな」
「そうですか、ありがとうございます。それじゃあこれで」
「いや、ちょっと……」
まだ何か言いたそうにしていたが、相手の無事も確認できているのでもう俺達に出来る事は無いはずだ。
みんなに目配せをして足早に先に進む事にした。
「あの人たち結構食いついて来てたわね」
「まあ、無用なトラブルを避けるためにも賢明な判断だろう」
「それにしても、増えるゴブリンなんているんですね。初めて見たのです」
「そうだな。あれが1体限定のユニークスキルみたいなものだったらいいんだけど、いろんなモンスターが次から次へと増えたら対応出来ないですね」
恐らく先ほどのパーティは引き返すと思うが、追いつかれても面倒なので先を急ぐ事にする。
まあ、名乗ってもいないし、戦闘でバタバタしていたから俺らの印象もはっきりは残っていないだろう。
俺らの事が特定されるような事は無いと思うが、出来る事なら俺やメンバーの性格からしてもあまり目立つ行動は慎みたいものだ。
まあ今回は、他のパーティを見殺しにするような事は出来ないし、いい事をしたと思うので良しとしておこう。