A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (378)
第376話 15階層
俺は今15階層に到達した。
平日に俺とあいりさんで距離を稼いだ事が功を奏したようで、全員でアタックした土曜日1日で15階層まで到達する事が出来た。
14階層は基本ゴブリンの上位種で占められていたので俺のゴブリンスレイヤー(微)とも相性が良く思った以上にスムーズに15階層まで到達する事が出来た。
初めて踏み入れる15階層には残念ながらシャワーは無かった。代わりに小さな売店はあったものの、値段は500mlのミネラルウォーターが大台の1000円となっていた。緊急時以外はとても買う気になれない値段だ。
俺達3人は月曜日からテスト期間に入るので、相談の結果明日は休みにする事となり、このまま少しだけ15階層を探索する事にした。
「15階層の情報は持ってる?」
「はい。15階はゲートがあるので比較的情報が集めやすかったのです。ひと言で言うと幻獣です」
「幻獣?」
「そうです。結構知られているようなメジャーな幻獣も混じってるみたいなのです」
幻獣か!敵モンスターとは言えワード的に惹かれるものがあるので少しワクワクしてしまう。
「ご主人様、モンスターです。2体だけですがご注意ください」
歩きながら探索を始めて程なく敵モンスターに遭遇した。
2体なので14階層に比べると数が少ないが、初見のモンスターなので油断は禁物だ。
メンバーでフォーメーションを固めて敵を待ち受けるが10秒程でモンスターが襲ってきた。
「シル、一応『鉄壁の乙女』を頼む」
「はい、お任せください『鉄壁の乙女』」
「なあ、みんなあれって何?」
「あれは豚じゃないかしら」
「豚だな」
「金色の豚なのです」
幻獣と聞いてワクワクしていたのにあれは一体なんなんだ?
かなり大きい。牛程もある金色の豚。以前金色のスライムを倒したが、あれとはまた違った感じのゴールドなのでレアモンスターという感じでは無い。
「あれって幻獣?なのか?」
「まあ、金色の豚ですから、ある意味幻の生物ですね」
「幻って言うか、巨大な貯金箱みたいなんだけど………」
「倒したら、金銀財宝が出てくるかもしれないわね」
確かにその可能性も捨て切れない。
豚のくせに突っ込んで来ない所をみると、それなりに知能は高い様に見える。
「それじゃあ、俺からやってみる」
俺はバルザードを構えて左側の黄金豚に向けて斬撃を飛ばしてみるが、見えない刃が豚に届いた瞬間金属音が聞こえたものの何も起こらなかった。
「うそだろ。バルザードの斬撃で無傷?」
「完全に金属音がしたな。あの金色は見せかけでは無く本当に金属で出来ている様だな」
「あんなのでも15階層のモンスターだから以前のゴーレムの上位豚版なんじゃない?」
金属製のボディを持っているのであれば近接してバルザードで斬り伏せるか、至近距離から『ドラグナー』を打ち込めばいけるか?
「海斗、せっかくだからスナッチのスキルを使ってみてもいい?どうせ今日はこれで終わりでしょ」
「ああ、それじゃあお願いしてみようかな。右側を頼んだ。左側は俺とベルリアで何とかしてみる」
「わかったわ。それじゃあスナッチ行くわよ『フラッシュボム』よ」
ミクがスナッチの新しいスキル名を告げると同時にスナッチの体が眩しく発光して、そのまま一直線に右の金豚に向かって飛んで行った。飛んで行ったと言うか俺には大きな光の弾が高速で放たれたようにしか見えなかったが、光の弾が金豚に触れた瞬間破裂音がして大きな穴が空いており、金豚はそのまま消滅してしまった。
「おおっ!スナッチ凄いな。ベルリア俺達も負けてられないぞ」
「マイロードお任せ下さい」
右側の金豚の消滅を確認と同時に俺とベルリアは光のサークルを越えて残りの1体を目掛けて駆けて行く。
距離が縮まって来た瞬間、金豚は予想外の速さで俺の眼前から移動して俺の横側に回り込んできた。
「はやっ!」
15階層の豚はただの金色の豚では無く、素早い金色の豚だったようだ。
一瞬の動きだったが完全に俺のスピードを凌駕している様に見えたので、侮れない。