A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (388)
第386話 到着
ベルリアは石の槍を躱しながら攻撃に転じるが、やはり4つ脚の相手の方が移動速度は速く、詰めた分だけケンタウロスも後ろに下がり距離をとられる。
そしてこちらはケンタウロスのイメージ通り手には弓を持っており、矢も合わせて放って来る。
結構な体躯の大きさと見た目に反して、こいつは完全に中遠距離タイプらしい。
明らかにベルリアとは相性が悪い。
「ベルリア、手伝おうか?」
「いえ、大丈夫です。私にはマイロードに頂いたこれがあります」
ベルリアはそう言って右手の剣を魔核銃に持ち替えた。
「プシュ」 「プシュ」
「ぐぅアッ!」
魔核銃の発射音と共にケンタウロスの呻き声が聞こえてきた。
見るとケンタウロスの前脚2本共の真ん中に魔核銃の着弾痕がくっきりと残っている。
完全に動きが止まったケンタウロスに向かって駆けて行き2刀で、あっさり長い馬の首の中程をを刈り取ってしまった。
「マイロード、全く問題ありませんでした」
「そうか?」
確かに力の差は歴然としていたものの思った以上に強敵だったので、全く問題ないと言える程、楽勝では無かったと思う。
その証拠に本来使うつもりは無かったであろう魔核銃も使わされていた。
ベルリアの見栄っ張りにも困ったものだ。
「おいっ、あのちっこいの他の2人のおまけか付き人か何かだと思ったら、滅茶苦茶強くないか?」
「ああ、俺も1番影が薄いから目に入ってなかったけど、やっぱりサーバントだけあって只者じゃ無いな」
「俺は幼児趣味はないけど、女の子とかには結構人気出そうじゃないか?」
「ああ、でもパーティの中では序列が低いのかあんまり良い扱いを受けてなさそうに見えるな」
「まあ、あのメンバーの中じゃあな〜」
ベルリアがケンタウロスを倒す事に成功したので隊列に戻って先に進もうとしたが、やはり俺達同様他のパーティの戦いが気になるのだろう。すぐ前のパーティ以外のパーティも足を止めてベルリアの戦いを見ていた様だ。
まあベルリアの戦い方が一般的な探索者の参考になるかどうかは分からないが、こうやってお互いに情報を得るのは集団戦に向けては悪くない事だと思う。
「おい、ベルリア!お前だけずるいぞ!わたしだって少しはドカーンとやりたいんだぞ!」
「姫!申し訳ございません。ただあの程度の敵にルシェ姫の手を煩わせる事はありません。全てこのベルリアにお任せ下さい」
「もう退屈なんだ!海斗、1番前に行ってきていいか?」
「いい訳ないだろ!目立ってどうするんだよ。ただでさえ1番下っ端のパーティなんだから目をつけられる様な真似はやめてくれ」
「それじゃあ、かわりに何かくれよ」
「かわりにって………」
「無いのか?」
「分かったよ。魔核だろ。1個だけだぞ」
「1個だけ!?え〜無理!」
ルシェ無理ってなんだ無理って。
「分かったよ。それじゃあ2個な。それ以上はこっちが無理だからな」
「ケチ。それで我慢してやるよ」
尚も文句を言うルシェにスライムの魔核を2個渡してやるが、強く視線を感じる。それも2人分感じる。
これは見なくても分かっている。
「わかってるよ。シル達にも2個ずつな」
「えっ?ご主人様、いいんですか?」
良くは無いけど、そんな目をされたら渡さない訳にはいかない。
「マイロード。ありがとうございます。一層頑張ります」
1回の戦闘で6個の魔核が消費されてしまったが、幸いな事に直接的な戦闘が殆ど無いので、魔核の消費も殆ど無い状態でここまで来れている為、少しぐらいの浪費なら許されるだろう。
そこから更に1時間半程経った頃先頭の集団から声が上がった。
「あったぞ!ここに間違いない」
声の方に進んでみると全てのパーティが集まっており、目の前には大きな土色の扉が閉じた状態でダンジョンの通路の脇の壁に出現していた。
扉とは別方向に通常の通路があり、今でこそはっきりと姿を表しているがカモフラージュされていれば普通気がつく事は無い場所に扉がついているので、見つけた人はよく気がついたものだと思う。
今日は、ここまでの予定なので扉には誰も触らずに、全参加者で道を引き返す事にした。
帰り道もK -12は後方を歩く事が多かったので足が疲れた事以外は殆ど消耗する事なく初日を終える事が出来た。
明日は遂にエリアボス戦なので、今日はしっかりと寝て備えようと思う。