A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (391)
第389話 レイドバトル
俺の前にはエリアボスがいる。
エリアボスに相応しいメジャーモンスター牛鬼、いやミノタウロスだ!
それも1体では無い。普通ボスといえば1匹だと思うが目の前には推定50体はいる。
1体が結構なサイズ感があるのでこれだけの数揃うと威圧感が半端ではない。
今回の6パーティは前衛タイプが多い様なので相性は良さそうだが単純計算では倍近くの敵がいる事になる。
1体毎の能力も高いと思われるので普通であれば劣勢は免れないところだが、ここはダンジョンで四方を壁で囲まれた限られた空間なので横1列に陣取った俺達に対して、ミノタウロスが50体で向かって来る事は無く、ほぼ半数がこちらの前線と交戦している。
俺も目の前のミノタウロスに向かって行くが、残念ながらこの隊列を組んだ状態では気配を消すメリットも薄く、何よりも俺が後方に回り込む間に前線ラインを突破される恐れがあるので気合を入れて正面から倒しにかかる。
「くっ!でかいくせに速いな。おおおおぉ〜!」
巨体に似合わないスピードと定番とも言える特大サイズの戦斧をぶん回して来るので恐ろしい。
バルザードで受け止める事はできるかもしれないが、この勢いでバルザードが折れる可能性もありえる。
それよりもバルザードの前に俺が力負けしてしまう可能性の方が高いだろう。
俺はベルリア仕込みのステップによる回避を繰り返しながら反撃を試みようとするが、進化したとはいえショートソードサイズのバルザードでは完全にリーチが足りない。
間合いに入り込む事が出来ず苦戦しているところに
「ご主人様、下がってください。我が敵を穿て神槍『ラジュネイト』」
シルが入れ替わりで前に出て俺の相手をしていたミノタウロスを撃退してくれた。
すぐに次の敵が向かって来るが、少し時間が稼げたのでバルザードに氷を纏わせて魔氷剣を発現させる。
「シル、俺がやる。下がって他の2人のフォローも頼む!」
魔氷剣の斬撃を向かって来るミノタウロスに放ってからそのまま迎え撃つ。
不可視の斬撃が確実にミノタウロスにダメージを与えて動きを鈍らせているが、まだまだ暴れながら突っ込んで来そうだったので『ドラグナー』で追撃をかける。
実際に見るミノタウロスは、かなりの体毛が生えており、思っていた以上に獣っぽいが、強度のありそうな外皮を青い弾丸が貫通して深手を負わせる。
「ブゥグアア〜!」
ミノタウロスは痛みに声を上げながらも思った通り突っ込んで来る。流石はエリアボスだ。
鈍った戦斧の一撃を躱した瞬間魔氷剣をミノタウロスの鍛え抜かれた腹部に向かって左手で斬りつけ、そのまま切断のイメージを重ねて一気に斬り裂く。
これでシルと合わせて2体。戦闘自体は1分に満たない時間だが、初見の敵と普段とは違う雰囲気の中での戦闘にいつもよりも疲労感を感じる。
俺の前方は相手が居なくなったのでベルリアとあいりさんの方に目をやると、ベルリアのフォローをヒカリンが、あいりさんのフォローをミクとスナッチがおこなっている。
ルシェは1人自由に後方からスキルを放っている様だ。
ベルリアはミノタウロスの巨体にも力負けせずに正面から斬り結んでいる。
ベルリアの技術あってこそだと思うが、巨大な戦斧を片方の剣でしっかりと受け止めながらもう片方の剣で手傷を負わせていっている。
動きが止まった所をヒカリンが『ファイアボルト』で攻撃している。
「ヒカリン、あいりさんの所にも『アースウェイブ』を!」
この密集した戦闘では『アースウェイブ』は絶対的な効果を発揮するはずだ。
俺の指示でカオリンが即座に『アースウェイブ』を発動して、あいりさんの正面のミノタウロスの動きを鈍らせる。
その隙をついてあいりさんが『斬鉄撃』を発動してミノタウロスの首をはねとばし消失させる事に成功したのを見届け俺も魔氷剣を構え直して次の敵へと向かって行く。