A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (394)
第392話 キングミノタウロス
ミノタウロスの数は残り7体迄減って来た。ほぼ倍の数の探索者が取り囲んで攻撃を仕掛けているので間も無く戦闘は終了するだろう。
想定していたよりも数が多かったので苦戦はしたが、周りも15階層まで来たパーティだけあってかなり強く、ミノタウロスに押し負ける事なく各個撃破していっているのでかなり余裕も出て来た。
取り囲んでいる場所にはスペースが無いので、俺達のパーティは既に役割を終えて戦闘から外れた場所で待機している。
「6パーティいたからなんとかなったけど俺達だけじゃ無理だったな。流石はエリアボスだな」
「そうね。もっと数が少ない時に来てれば、私達だけでもなんとかなったと思うけど流石に50体は無理ね」
「マイロード、50体だろうが100体だろうがものの数ではありません」
「あ〜そうだな。ま〜頑張ろうな」
ベルリアのやる気は買うが、いくら士爵級悪魔でも幼児化した状態で100体は論外だろう。
「増殖したミノタウロスもしっかり魔核を残してるみたいだし100個はあるな」
「そうですね。ある意味ここで倒し続けていれば無限に魔核を稼げる可能性があるのでは無いでしょうか?」
「確かに可能かもしれないけど、それを試すのは勇気がいるな。それよりエリアボスだからレアドロップとか出ないかな」
「その可能性は十分あるな。もしエリクサーだったら……」
「その時は俺が他の人全員に土下座でもなんでもして頼み込みますよ。任せてください!」
「そうか。それは頼もしい……な……」
そうだ。ここでエリクサーが出る可能性もあった。
その場合30名近くいる他の人達を説得しなければならない。
なんとか頼み込んで分割払いか何かで融通してもらうしか無いかもしれない。
「うっわああああ〜」
「おいおい、なんだこれ!」
「やべーよ」
ほぼ戦闘が終わっていたはずの所から急に探索者達の声が聞こえて来た。
「なんだ?どうしたんだ何かあったのか?」
「ここからではよくわからないが、探索者が押されてないか?」
見ていると、敵の数が減って取り囲む輪と人数が減っていた戦闘区域の探索者が数人弾き飛ばされているのが見えた。
「グウブゥォオオオオオ〜!」
ミノタウロスの雄叫びが上がり、こちらまでビリビリと空気の振動が伝わって来た。
なんだ?今までの感じとは違う。
「ご主人様、戦闘準備をお願いします。敵の1体が変化をした様です。明らかに今までの個体よりも強いです」
変化?
モンスターって変化なんかするのか?
「シル、変化ってなんだ?ミノタウロスって変化するのか?」
「ミノタウロスに限った事ではありませんが、何かをきっかけにして稀に上位個体に変化する事があるようです」
上位個体に変化、いわゆる進化みたいなものか?
と言う事はミノタウロスの上位個体という事だから、ホブミノタウロス?
あんまりかっこよくないからミノタウロスロードいやキングミノタウロスか?
「みんなも準備しておいて。他のパーティが片付けちゃうかもしれないけど、ダメな場合は俺達もいくよ」
「分かったわ」
「はい」
「ああ」
再び武器を構えて戦闘の中心を凝視していると暴れているモンスターが見えた。
先程迄のミノタウロスより一回り以上大きい上に色が違う。茶褐色だった毛や表面部分が赤く染まっている。
見るからに強そうだが、6人ほどの探索者が全方位を囲んで切り掛かっているものの、赤いミノタウロスは両手に持つ2つの巨大な戦斧を振り回して1体で応戦している。
そして今までには見られなかった魔法かスキルでの攻撃を行なっており、戦斧の動きに合わせて風が舞って、探索者を寄せ付けなくなっていた。
流石はキングミノタウロスだ。俺が勝手にそう名付けただけの事はある。
すぐに裸の王様にしてやるから待ってろよ。