A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (395)
第393話 王様達
キングミノタウロスの出現に緊張感を走らせ臨戦態勢に入っているが、俺には一向に出番はやって来ない。
当初囲んでいたメンバーに周囲の数人が加わってほぼ10人の探索者が全方向から攻撃をかけているので、流石のキングミノタウロスも最初の勢いは徐々に失われて来ている。
このままいけば、俺達の出番は無さそうだ。
「もう終わりそうだな。ちょっとあの赤いミノタウロスには興味があったんだけど戦う事なく終わりそうだよな」
「まあ、あれがいっぱい出て来たら大変だからよかったんじゃない?」
「そうですよ。無事依頼完了なのですよ」
「まあ、普通のミノタウロスより強いのは間違い無いな。探索者10人と単体で渡り合ってるんだから相当なものだろう」
K-12のメンバーも終戦を前に再びリラックスモードになってきている。
「うっわああああ〜!」
大きな叫び声がしたので咄嗟に声の方を見るとそこにはキングミノタウロスが立っていた。
立っているが、先程迄の個体はまだ探索者に囲まれて戦っているので別の個体だ。
増えた。
頭から完全に抜けていた。ミノタウロスが増殖するのだから当然キングミノタウロスも増殖しておかしくないのだが、残りが最後の1体だったのと進化した特殊個体のせいで頭の中で今までのミノタウロスとは別物だと誤認してしまっていた。
1体で探索者10人を相手に出来るキングミノタウロスなのでこれ以上増えるのはまずい。
「みんないくぞ!」
俺はみんなに声をかけてから、新しく現れたキングミノタウロスに向けて走り出した。
俺よりも近くにいた探索者は既に交戦状態に入っている。
ナイトブリンガーの効果がどれ程通用するかは分からないが、効果を発動して近づいていくが、最初の個体と同じ能力を持っている様で振り回している戦斧の周囲を風が舞っているので、懐に入るのは難しい。
俺は距離を詰めると同時に魔氷剣の斬撃を飛ばす。
斬撃は見事にキングミノタウロスに命中するが、明らかに傷が浅い。
通常のミノタウロスよりも防御力が高くなっているのは間違い無さそうだ。
俺の両脇をベルリアとあいりさんが駆けていき、敵と直接斬り結びんだ。
ベルリアが2刀を使い片方の戦斧を受け止め、他の探索者がもう一方の戦斧を抑えている間にあいりさんが『斬鉄撃』で袈裟懸けに斬り裂いた。
「グブゥウォオオオオオ〜!」
あいりさんの一撃はかなり効いた様で痛みに暴れ出しているが、消失には至っていない。
「ご主人様、あっちにも」
後方からシルの声が聞こえて来たので指示する方に目を向けると3体目のキングミノタウロスが出現していた。
まずい。これ以上は冗談抜きでまずい。
まだ1体目のキングミノタウロスも倒せてはいないので、これ以上は探索者の数に余裕がない。
「ミクとヒカリンはベルリア達のフォローを。やばくなったらスナッチの『フラッシュボム』を使ってくれ。
シル、ルシェ、俺と一緒にもう一体の方に向かうぞ!」
3体目にも既に他の探索者が対応しているので俺達が加勢すればいけるはずだ。
俺はその場から3体目のキングミノタウロスに向かって『ドラグナー』を放った。
完璧に狙いをつけた蒼い弾は光を引いてミノタウロスの肩口に穴を開ける事に成功した。
「ズレたっ!」
俺の感覚では胸の真ん中に命中させる予定だったのだが、恐らく戦斧による風の影響を受けて弾の軌道がズレてしまった。
それでもかなりの手傷を負わせた事には違い無いので、更に『ドラグナー』を放つが、やはりズレて脇腹に命中する。
「ご主人様、4体目です」
おいおい、4体目ってもう対応できるメンバーいないだろ。
俺達が1体も仕留め切る事が出来ない間に4体目のキングミノタウロスが出現してしまった。