A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (397)
第395話 終戦
「ふ〜っ。終わったみたいだ。進化した時はちょっと焦ったけど倒せてよかったな」
「ご主人様、よかったです。あの…………」
「どうしたシル?どこか怪我でもしたのか?」
「馬鹿なのか。腹が減ったに決まってるだろ。早くくれよ!」
ああ、そうだった。俺は戦いが終わってホッと一息ついてたけど、彼女達の腹減りは待った無しだった。
「それじゃあ、今日は頑張ってくれたから1人10個だ!」
「わたし達を舐めてるのか?これだけ必死に戦ってたった10個!?無いな」
…………ルシェ、確かに活躍してくれたとは思うけどルシェって今回そんなに必死で戦っていたか?
俺と違って結構余裕を持って戦っていた様にも見えたけど。
「そうか……じゃあ15個だ。それでいいだろ」
「20個だ。それで我慢してやるよ」
20個。3人で60個か。まあ報奨金も出るし必要経費と考えたらこのぐらいは仕方がないか。
「分かったよ、じゃあそれでいこう。シルもそれでいいか?」
「はい、もちろんです。ありがとうございます」
シルが、満面の笑顔で喜んでくれている。
ああ、どうせあげるならルシェの様に毒舌で来られるよりもシルの笑顔が何百倍も素晴らしい。
シルの笑顔はまさにゴッドスマイル。春香の笑顔と双璧を成す俺の心の清涼剤だ。
「マイロード、私にもお願いして宜しいでしょうか」
「もちろんだ。ベルリアも頑張ってくれたからな」
「はい。ありがとうございます。これからも頑張ります」
俺はスライムの魔核を60個取り出して3人のサーバントに手渡した。
あれだけ悪態をついていたルシェも満足そうな顔で魔核を吸収している。
「なあ、シル聞いてもいいか?魔核って美味しいのか?それとも味は無いの?」
「はい。もちろん美味しいですよ。甘くて良い香りがします」
「そうなんだ。不思議なものだな」
「はい、魔核によっても少し味は違いますが、以前頂いた事のある赤い魔核が1番美味しかったです」
赤い魔核か………。以前俺が何も考えずにシルに渡してしまった100万円を超える特別な魔核。
ギルドで日番谷さんから聞いて絶望感に苛まれたあの赤い魔核はやはり高級品なのか。
「そうなんだ」
「はい。今までに無いとろける様な濃厚な味わいでした。出来ればまた頂きたいです」
「あ〜。あれはな〜たまたまだから。レアだから早々手に入る様な魔核じゃ無いんだ」
「そうなんですか……残念です……」
思っていた以上にシルが落ち込んでしまった。そんなにあの赤い魔核が美味しかったのか。だがもし次見つけても前回の様に何も考えずに渡すわけにはいかないな。
「海斗!赤い魔核ってなんだ!私はそんなのもらった事ないぞ!」
「いや、それは渡した事無いから」
「どう言う事なんだ!シルだけっていじめか!わたしに対する嫌がらせか!」
「ちょっと待て。そんなわけないだろ。赤い魔核はレアなんだよ。俺も今までで1個しか手に入れた事は無いんだ。誤解だよ」
「じゃあなんでその1個はシルなんだよ。やっぱりいじめだな」
「いやいや、その時はシルしかいなかったからだろ。変な言いがかりやめてくれ」
「本当だな。それじゃあ次赤い魔石を手に入れたらわたしにくれよ」
「え…………」
「だっていじめじゃ無いんだろ。シルだけもらって私は無いなんて………」
「………………」
赤い魔核か。若干のトラウマにもなりかけたあの赤い魔核か。シルにポンと渡すにはあまりに高額な魔核だが、4年間で1個しか手に入れた事の無いレアな魔核なので今後俺が手に入れる可能性は限りなく低い。まあ大丈夫かな。
「分かったよ。次手に入ったらな」
「本当だな。絶対だぞ!」
「ああ、手に入ったらな」
「約束だからな!」
ルシェとの約束は怖くて破れないが、あくまでも手に入らないければそれまでなので、今まで通りあまり気にしなくてもいいだろう。