A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (426)
第424話 刃こぼれ
「あああああ〜っ!」
俺の、俺の大事なバルザードが…………
「急にどうしたのよ」
「それが…………」
「びっくりしました。虫でも出ましたか?」
「いや、虫じゃ無い」
「どうしたんだ?そんなに大きな声で」
「俺のバルザードが、欠けました」
「………………えっ?」
さっきのカメラ戦で欠けたのだと思うが、僅かながら先端に近い位置がギザギザになっている。
カメラの外装が硬過ぎたのか、もしくは遠心力で変な力がかかったのか。
可能性としては金属疲労も考えられるが、おっさんの店で魔剣用の砥石を買ってからはDVDを見て自分なりに研究を重ねて毎日の様に研いできたのでメンテナンス不足という事はないだろう。
「欠けたってどう言う意味?」
「刃が欠けた。刃こぼれしたって意味」
「バルザードって魔剣よね。魔剣って刃こぼれするの?」
「一応武器屋のおっさんに聞いてはいたんだ。形あるものは壊れる。魔剣だろうが使えば当然壊れる事もある
って。そう言われてメンテナンスも毎日欠かさずにやってたんだけどダメだった………」
「ちょっと見せて」
そう言ってミクが俺のバルザードを手に取りじっくりと刃を見始めた。
「これか〜。確かに欠けてるわね。でも少しじゃない。このぐらい大丈夫じゃないの」
「私にも見せてくれ。あ〜魔剣も欠けるんだな。勉強になったよ。私も武器の扱いには気を付けないといけないな。でもこれなら大丈夫だ。このぐらいなら、それほど斬ったり突いたりする事に影響は無いと思う」
「あんまり硬い敵に使わない方がいいのかもしれませんね〜」
「でも、バルザードを使わないと俺の攻撃手段が『ドラグナー』だけになっちゃうからそれは難しいよ。それにしてもこれ研いだら直ったりしないかな」
「これだけ欠けてるとおそらく素人が研いだのでは難しいだろうな」
「えっ、さっき大した事無いて言ってませんでしたか?」
「う、ううん、まあそう言ったが、素人で直せるレベルは超えてるかな」
「それじゃあ直らないんですかね」
「いや、プロの研ぎ師であれば十分直せる範囲だとおもうぞ」
「そうですか。それじゃあ、明日にでも武器屋に持って行ってみますよ」
「直るといいわね」
「うん…………」
おっさんから魔剣も壊れる事があるとは聞いていたが、実際に起こってしまうとショックが大きい。
デカすぎる………
俺のバルザードが………
よくよく思い返してみるとカメラを倒す時に選択を誤ったかもしれない。
下から突き刺した時にのせたイメージは破裂。一瞬で勝負を決める為に破裂のイメージを選択した。
その為もあり、刺した瞬間にかなり硬い抵抗を感じた。
もしあの時に切断もしくは刺すイメージをのせていれば、バルザードの刃に負担をかける事無く突き刺す事が出来ていたかもしれない。
突き入れた後で破裂のイメージをのせるべきだったのだろう。
勝負を急いで焦ったのと、MPの節約も頭にあり一撃で決めようとしてしまったのが裏目に出てしまった。
時と場合にもよるが、硬い敵には必ず最初に切断のイメージをのせて斬りかかる事にしよう。
ケチると取り返しのつかない事になりそうだ。
今回高すぎる授業料だが1つ勉強になったと諦めるしか無い。
「そういえばベルリアもカメラに斬り込んでたけど剣は大丈夫なのか?」
「マイロード、大丈夫かと聞かれればもちろん大丈夫ですが、刃こぼれはもちろん有りますよ」
「え?刃こぼれあるの?大丈夫なのか?」
「当然あれだけ硬い物を斬れば多少の刃こぼれはありますが、そもそも私の2刀は切れ味重視というよりも、重さと勢いで叩き斬るタイプですので、そこを余り気にしても仕方が無いのです」
「そう言う物か?」
「剣とはそう言う物です。斬ればその分痛み(傷み)ます。特に私のは魔剣という訳でもありませんので」
ベルリア………魔剣が欲しいのは分かるが、傷心の俺に対してその言い方はどうなんだ。