A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (429)
第427話 おっさんが研ぐ
今日は久しぶりに春香と遊びに行く為に駅で待ち合わせをしている。
9時30分に駅で待ち合わせているが俺は9時から待っている。
テスト勉強を一緒にしたし学校でも先日まで一緒に授業を受けていたのに、小学校の遠足前の様にテンションが上がってしまい、朝7時前に目が覚めてしまった。
落ち着かないので早めに出て来て既に20分以上待っているが、突然春の香りを纏った天使が目の前に現れた。
「おはよう」
「ああ、おはよう。その服この前買った服だよね」
「うん、丁度良い季節になって来たから。着てみたんだけど変じゃないかな」
「変じゃないです。良いです」
春香が着ていた服は以前一緒に選んだパステルカラーのパンツルックだった。
試着の時もいいと思ったが、外で見ると一際輝いて見える。
普段スカートを履いた春香しか見る機会がないので、新鮮かつ鮮烈で可憐。
一方の俺は普段通りのデニムのパンツに量販店で買ったグレーのパーカー。
並んだ感じ若干の違和感があるが、こればっかりは仕方がない。
「海斗が持ってるのって、剣だよね。でも前買ったのより小さい気がするんだけど」
「うん、よく分かったね。前買ったのとは別物で俺がメインで使ってる剣なんだけど、昨日刃こぼれしちゃったから、ダンジョンマーケットに修理に出したいんだけど大丈夫かな」
「うん、もちろん良いよ。でも前の剣も折れたって言ってたし、剣って結構折れたりする物なんだね」
「折れたのはこの前のが初めてなんだけど、これ一応魔剣なんだ。だから大事にしたくって」
「魔剣?魔剣ってこんな感じなんだね。もっと炎が出てたり、妖気みたいなのが吹き出したりしてるかと思ったよ」
「そう言う魔剣もあるかもしれないけど、これはそんなんじゃなくて成長するんだ。最初はこのぐらいのステーキナイフぐらいしか無かったんだけど、成長して今はこのサイズなんだ」
「剣なのに成長するんだね。魔剣ってやっぱりすごいんだね。でも魔剣って言うぐらいだから呪われたりは大丈夫?」
「魔剣って言ってもこれは呪われた剣とかじゃないから大丈夫だよ」
「そうなんだ」
合流してバルザードを春香に見せてから一緒にダンジョンマーケットに向かった。
「それじゃあ、いつものおっさんのお店だから」
「あ〜あのお兄さんのお店ね」
ダンジョンマーケットについてすぐにおっさんの店に直行した。
「こんにちは」
「お〜坊主か。またお嬢ちゃんと一緒なのか。仲のいい事だな。今日は何買ってくれるんだ」
「いえ今日はこれを研いで欲しいんです」
そう言ってバルザードをおっさんに見せた。
「これは、ここで買った剣じゃね〜な。あれか、この前言ってた魔剣か」
「そうです」
「あ〜これか。確かに欠けてんな。それにしても珍しいタイプの魔剣じゃね〜か。店で見た事ね〜な」
「自分の力でドロップした剣ですからね」
「ちょっと小振りだが、特殊効果はなんかあんのか?」
「一応、これ成長するんです。これで2回成長してます。それとイメージを斬撃に伝える効果があります」
「ほう、成長する魔剣か。それじゃあまだ成長する可能性があるって事か。しかし2回成長してこの大きさって元の大きさはどのぐらいだったんだ?」
「ステーキナイフぐらいです」
「ステーキナイフ!?そんなサイズの魔剣見た事ね〜ぞ」
「ギルドでも最小かもと言われました」
「ふ〜ん、よくそのサイズからここまで育てたな。普通そのサイズの魔剣をメインで使って育てようとは思わね〜だろ。ある意味スゲ〜な」
「それよりこれ直りますか?」
「ああ、この程度なら問題無く直るぞ。ただし、研いで直すって事はその分は刀身が薄くなるって事だからな。何度も何度もやってるとそのうち折れるぞ」
「欠けたのは今回が初めてです」
「ま〜今後は気をつけるんだな」
「明日の夜か明後日の朝までにお願いしたいんですけど、出来ますか?」
「あ〜?明後日まで?俺も忙しいんだぜ?明後日までなら20万だな」
20万か。安くは無いが直るのなら必要経費だろう。
「じゃあ、それでお願いします」
「おお、それじゃあ俺が魂込めて研いどいてやるよ」
「お願いします」
魂込めてっておっさんが研ぐのか。本当に大丈夫だろうな。