A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (431)
第429話 あなたの肝臓を食べたい
「海斗、このペアセットの方がお得だよ」
「あ、そう、そうだね。じゃあそれで」
映画館の売店でポップコーンを買ったがLサイズを春香と2人で分ける事になった。
俺は普通にレギュラーサイズとジュースを買おうとしたが、Lサイズとジュース2個のセットの方がお得だったので春香の勧めでセットを買うことになった。
俺は若干躊躇してしまったが2人で1つのポップコーンを食べながら映画を観る。
まるでデートのようだ……
これは意識するなと言う方が無理だろう。
むしろ意識しすぎて食べ辛い。
今までとは違う妙な緊張感の中映画が始まった
ストーリーは、主人公とヒロインが高校で出会う所から始まる。
主人公は所謂デブだったのだが、彼女に出会いダイエットに励む事となる。
彼女の献身的なサポートもありダイエットに励む中での笑いと恋愛がミックスされた学園青春ラブストーリーだった。
ダイエットしている主人公を前にポップコーンとジュースを飲む事に若干の罪悪感を感じながら、春香が食べていないタイミングを見計らって手を伸ばし食べる。
タイミングを外す訳にはいかないので指先に集中するが、集中しすぎて映画の内容が耳に入って来ない。
「ふふっ」
春香の小さな笑い声が聞こえたのでスクリーンを見ると、主人公がまわしを締めて相撲エクササイズに精を出しているシーンだった。
映画の中の主人公はダイエットが上手くいかなかったり、リバウンドして心が折れかけたりする中で、彼女との交流で再びやる気を取り戻して最後にはダイエットを成功させる事が出来た。
クライマックスはダイエットに成功した主人公が彼女に告白をしてOKを貰いハッピーエンドとなるのだが、なんと彼女は、ぽっちゃりも好きと言うオチが最後に待っていた。
映画を見る限り肝臓を食べたいと言う題名は肝脂肪を減らしたいと言う意味合いらしい。
ショッキングな題名なので内容を知らずに観た俺は、途中どこで猟奇的なシーンが出てくるのかと違う意味でもドキドキしながら観ていたが、幸いな事に最後までそんなシーンは出て来なかった。
よくよく考えるとR指定されていない時点でそんなシーンが出てくるはずは無かったが、題名のインパクトが強すぎて途中まで全く気が付かなかった。
「面白かったね」
「ああ、思ってたのと違ったけど面白かったよ」
「あの相撲エクササイズが何とも言えずに笑っちゃったよ」
「あれは面白かったな〜。でもあれだけ頑張って痩せたのに彼女は、ぽっちゃりも大丈夫ってどうなんだろう」
「ぽっちゃりでも大丈夫っていう女の子は多いと思うけどな〜l
「えっ?春香もぽっちゃりが好きなの?」
「私は特別ぽっちゃりが好きな訳じゃ無いけど、好きな人がぽっちゃりなのは全然大丈夫だよ」
「そうなんだ。じゃあ春香はどんな体型が1番好き?」
「私は普通の感じがいいかな〜」
「そ、そう。普通が1番だよね。うん」
俺は中肉中背だし所謂普通だよな。
ただダンジョンに潜り続けたせいで最近は少し筋肉質になって来ているが、一応普通の範疇に収まっているはずだ。
「海斗はどんな体型が良いとかあるの?」
「俺?特には無いけど普通で良いです」
「男の子と違って女の子の普通は色々あると思うんだけど」
「痩せすぎず健康的な感じがいいと思うけど」
「そうなんだね」
俺としては春香の体型が1番良いに決まっているが、本人を前に伝える事など出来るはずもないので、健康的なのが良いと伝えしまった。
春香は健康的かつ魅力が溢れている。
この魅力は体型からくるものだけでは無く、顔や内面を含めた春香と言う存在が醸し出しているものだと思うので、体型の好みなど俺には全く意味の無い話しだと思う。
ただ映画の主人公はどう見ても太りすぎていたので健康の為にもダイエットは必須だったと思う。
劇中でも主人公は高校生にして既に成人病を心配されており、体脂肪率が40%もあった。
やっぱり健康はプライスレスだ。