A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (432)
第430話 ジョガーパンツ
映画を見て終わったが時刻は15時15分なので、まだ時間は十分にある。
映画以外は、ほぼノープランだったのでこの後する事を思いつかない。
「春香、この後どうしようか?」
「海斗は、ショッピングモールでしたい事とか無いの?」
「ここでしたい事か………それじゃあ服が買いたいかな。春香は綺麗な服着てるけど俺は……」
「うん、じゃあ海斗の服を買いに行こう。私が選んでも大丈夫かな?」
「もちろんだよ。お願いします」
朝会った時から春香と俺の格好の違いが気になっていたので、春香に服を選んでもらう事にする。
「今の季節に海斗はいつもどんな服を着てるの?今日みたいな感じなのかな?」
「うん、そう。大体トレーナーかパーカーにデニムのパンツ」
「今日は1種類だけ買う?」
「いや出来たらいくつか選んでくれたら嬉しいけど」
「それじゃあ、最初はあのお店に入ってみようよ」
春香に連れられて入ったのは、俺が普段着るような服を扱っているカジュアルウェアのショップだった。
「海斗はトレーナーとかパーカーってどんな色のを着る事が多いのかな?」
「ほとんどグレー系だけど」
「それじゃあ今日は違う色にもチャレンジしてみようよ」
「お任せします」
お任せするとは確かに言ったけれども、何回かの着せ替えを経て今着ているパーカーはピンク色だ……
「春香、これピンク色なんだけど……」
「うん、良い感じだね。春っぽいしオシャレだよ」
「そ、そうかな……」
「うん、1着はこれにしようよ」
ピンクのパーカー………今までの俺の人生には全く登場しなかったアイテムだが、これ大丈夫なんだろうか?
「春っぽくってすごくお似合いですよ」
「そうですか?」
店員さんも勧めてくるが、本当に似合ってるのだろうか?
確かに、今日着ていた服に比べると随分オシャレになったような錯覚は覚えるが、俺がピンク色の服を着れるのか?
「うん、海斗やっぱり似合ってるよ」
着れる!春香が似合ってると言うのだから似合ってるのだろう。
だから俺はピンク色のパーカーを着れる!
「じゃあ、これください」
と言うか春香にお任せした以上俺に買わないと言う選択肢はない。
1軒目の店でピンクのパーカーを買い、次に連れて行ってもらったのは前回も来たちょっとオシャレな大人っぽいお店だ。
「じゃあ、次は大人っぽい感じで選んでみるね」
「はい、お願いします」
そこからは、また着せ替えショーが始まった。
「う〜ん、ちょっと違うかな〜。海斗次はこっちに着替えて見てね」
春香が真剣に選んでくれているので俺としては何の不満も無いが、俺の着せ替えショーなど誰も興味が無いと思う。
「あ〜良いんじゃ無いかな。ぐっと大人な感じ」
「そ、そう?」
「お客様、大変お似合いです。彼女さんのセンスが光りますね〜」
今度選んでくれたのは、薄手の白のセーターに麻で出来たジャケットだ。
「そのジャケットは麻で出来ているので、これからのシーズンにぴったりです。夏までいけますよ」
「ああ、そうなんですね」
俺に服の素材の話しをされてもいまいちピンと来ないので答えようが無い。
「海斗、これいいと思う。よく似合ってるよ」
「そ、そう?じゃあこれください」
ジャケットも購入し次のお店で購入したのはズボンだ。
「これ変じゃ無い?裾がゴムでちょっと今まで履いた事が無い感じなんだけど」
「うん、ジョガーパンツって言って結構流行ってるみたいだよ」
「ジョーカーパンツ?」
「違うよ」
「ジャガーパンツ?」
「ジョガーパンツだよ」
ジョガーパンツ?聞いた事が無いけど世の中では流行ってるのか?
ちょっとオシャレなスエットかトレーニングウェアのズボンみたいだけど……
「そうなんですよ。今流行ってるんです。ジョガーパンツ。色もいい感じですよ」
「そうですよね。海斗私も良い感じだと思うよ」
店員さんと春香が一緒になって勧めてくる。
これも今までの俺の人生には登場した事のないアイテムだ。
「そうかな。じゃあこれください」
「お買い上げありがとうございます」
今日は春香に手伝ってもらっていろいろと春服を買う事が出来てよかった。
自分では絶対に買う事の無い服だが、春香が良いと言ってるんだから良いんだろう。
俺1人で買いに来たら間違いなくグレーのパーカーを買って帰っていたと思うが、今日でまた少しだけ大人になった気がする。