A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (440)
第438話 メリーゴーランド
何とかヘブンズフォールラッターを終えて次のアトラクションに向かう事にする。
「海斗、なんとなく元気がない気がするんだけど大丈夫?」
「うん………全然大丈夫。気のせいだよ」
「そう、それなら良いけど、楽しくなかった?」
「いやいや、楽しかったよ。春香は結構ジェットコースターとか好きなの?」
「うん、そんなによく乗る訳じゃないけど、楽しいから好きだよ」
「そう。楽しんでくれて良かったよ。ジェットコースターはさっきので十分楽しんだから後は違うのに乗らない?」
「うん、そうしようか」
上手く話しをしてジェットコースター以外の乗り物に乗る事になったのでもう安心だ。
しばらく歩いてアトラクションの前に着いた。
「これ?」
「うん、これだよ。ゆっくりしてるしいいでしょ〜」
目の前にはメリーゴーランドが現れた。
メリーゴーランドに乗るのはいつ以来だろう。
空いていたのですぐに乗る事が出来たが、俺が乗る事になったのは白い木馬で春香も同じく木馬に乗る事になった。
音楽が始まり、ゆっくりとメリーゴーランドが回り始めた。
今までのアトラクションとは全く違い、身の危険は一切感じないし、ゆったりと乗る事が出来ているが、楽しいというより単純に恥ずかしい。
春香が木馬に乗っている姿は絵になるが、俺が木馬で回る様はなんとも言えない感じで、周囲の人達も俺の事など見て無いのはわかっているが、とにかく気恥ずかしい。
ジェットコースターは人の目は気にならなかったが、メリーゴーランドがこんなにも人の目が気になる乗り物だとは思わなかった。
小さな子供を連れた家族が乗っているのを見ると本当に幸せな感じでほっこりするが、自意識過剰なのか俺の周りだけ変な空気感が支配している気がする。
「海斗〜楽しいね」
「あ、ああ、うん」
春香が手を振ってくるので俺も遠慮がちに手を振り返す。春香は本当に楽しそうに乗っている。馬上の春香はメルヘンの世界から抜け出したプリンセスのようで笑顔が眩しいが、俺は………
間違っても天堂とかに見られたくは無いなと思いながら、伏し目がちに周囲を見回すとそこに天堂達がいた……
天堂としっかりと目があってしまった。
さっきのも完全に見られていたと思う。
一気に顔に血液が集中していくのが分かるが今更どうしようもない。
「海斗〜」
春香が再び俺に向かって手を振ってくれる。
恥ずかしいが俺には春香を無視する事など出来るはずがないので、天堂から見えないよう意識して小さく手を振って返した。
あ〜恥ずかしい!早く終わって欲しい。
ジェットコースターの時も早く終わって欲しかったが、今回は違った意味で早く終わって欲しい。
何周目かを終えた時に徐々に回転する速度が遅くなり、メリーゴーランドが止まった。
天堂はこれから乗るのだと思うが、お互いに見られたいものでも無いだろうからそのまま声をかけずに去る事にした。
「やっぱりメリーゴーランドは良いよね」
「うん。ジェットコースターとは違った感じだった……」
食後に乗るならヘブンズフォールラッターよりもメリーゴーランドを先に乗った方が良かったと思うので、順番を間違えた。
その後も緩やかな乗り物に幾つか乗ってる内に時間は過ぎて夕方になってしまったので、次のアトラクションで帰る事となった。
最後のアトラクションはリアルホラーハウス。
名前のどこにもラッターが出て来ない上にリアルがついているのが少し気になる。
所謂お化け屋敷だと思うが、ファミリー向けであればそこまで怖くは無いはずだ。
「春香はお化け屋敷とか大丈夫?」
「大丈夫というかお化けは普通に怖いよ。海斗は?」
「よく考えると俺お化け屋敷入るの初めてかも知れないけど、普段ダンジョンに潜ってるから大丈夫じゃ無いかな」
そう話しながら人生初となるお化け屋敷の入り口を2人でくぐった。