A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (442)
第440話 最強の剣
昨日は絶叫の連続だったが、僅かな時間だったとしても最後は春香との距離が少し縮まったような気がするので、ラッターランドに行った事は良かったと思う。
ただ昨日は力を使い果たしてしまいバルザードを引き取りにいけなかったので朝一番でおっさんの店に向かう。
「おはようございます。直りましたか?」
「あ〜?直りましたかって直ったに決まってるだろ。誰が研いだと思ってんだよ。この通りだぜ」
おっさんから渡されたバルザードを見ると刃こぼれは完全に直っている。
「おおっ、直ってる」
「当たり前だろ。だけどな直ったって言っても元に戻ったわけじゃね〜からな。刃を研ぐって事は刃をそれだけ削ったって事だからな。これを繰り返すと当然強度は落ちて来るから無茶すんじゃね〜ぞ」
「分かりました。ありがとうございます」
俺は代金の20万円を支払ってからダンジョンへと向かうと既に他のメンバーが揃っていた。
「海斗、バルザードは直ったの?」
「ああこの通りだ」
「ふ〜ん、綺麗に直るものね。全然分からなくなってるわね」
「おっさんがちゃんと仕事をしてくれたみたいだよ。だけどカメラと龍は思いの外武器への負担が大きいみたいだからな〜。特にカメラの対策が必要だよな」
「残念だけど魔法耐性も高いみたいだから私は出来て足止めぐらいね」
「カメラを倒すには、シルかルシェに頼るか、俺がやったみたいに下方に潜り込んでの一撃が有効だとは思うけど、仕留め損なって下敷きになるのが怖いんだよな〜」
「それならベルリアと一緒に潜り込むのが良いんじゃないか?ベルリアの力があれば最悪支えてくれるんじゃ無いか?」
「そうですね。それじゃあカメラが出た時はベルリアとペアで対処する事にしましょうか」
大まかな打ち合わせをしてから俺達は15階層へ向かった。
2日間休んだのでリフレッシュしてみんな調子が良さそうにしているが、俺だけは少し勝手が違った。
途中ペガサスなどのモンスターにも遭遇したが、俺だけいつもよりMPの消費が早くなってしまっている。
バルザードの損傷を気にして剣を振るう度に切断のイメージを重ねてしまっているせいで普段よりも余分に
MPを消費してしまっている。
MPがそれ程多く無い俺にとっては、結構な問題だがどうしてもバルザードを庇ってしまう。
「ご主人様、調子がお悪いのでしょうか?剣の捌きに迷いがある様に感じられるのですが」
「……流石シルはよく見てるな。実は、バルザードがまた欠けるんじゃ無いかと思ったら中々な〜」
「やはり、そうでしたか。ご主人様、そんな事は全く問題になりません。私とルシェをもっとお使い下さい」
「え?」
「ご主人様の剣はバルザードだけではありません。私とルシェもご主人様の剣であり盾なのです。バルザードが使えないのであれば私達をお使いください。私達は決して欠ける事はありません。安心してもっとお使い下さい」
「海斗、デートのしすぎでボケたのか?バルザードなんかただの魔剣。ただの剣にしか過ぎないのに何気を使ってるんだ。バカなのか。例えバルザードが折れたってわたし達がいるだろう。お前には過ぎた剣が2本もいるだろ。本当にポンコツだな。脳みそ腐ってんじゃ無いぞ」
「2人共………。そうだな、俺にはシルとルシェがいる。確かに最強の剣だな。はは……。それじゃあ次から俺の剣としてどんどん戦ってもらおうかな」
「もらおうかなじゃ無い!わたしが戦ってやるんだよ。感謝しろよ!それで魔核をもっとくれよ」
「ご主人様、私達の力はご主人様の力です。ご主人様のお考えも分かりますが、私達を使ってこそご主人様の力を最大限発揮する事になるのでは無いでしょうか」
「ああ、そうだな。シルも次から頼んだ」
俺は本当にサーバントに恵まれた。
頼り無い俺を2人がサポートしてくれる。
2人の言う通り俺は最強の剣を2本持っている。例えバルザードが折れたとしても、既にそれ以上の剣を2本も持っていたのだ。
その事に気がつくと、バルザードを振るう時に躊躇していた感覚が急に薄らいで行くのを感じた。
「マイロード、私もいます」
ああ、そうだった。俺の剣は2本じゃなくて3本だった……