A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (445)
第443話 再来
「コンッ、コンッ」
「ヒカリン風邪でもひいた?先週も少し咳してなかった?」
「いえ、大丈夫なのです。季節の変わり目で少し調子を崩しただけです」
「そう、じゃあ無理せず行こうか」
順調に進んでいるが、ヒカリンが少し風邪気味の様なので様子を見ながら進んで行こうと思う。
先週も咳していた気がするのでちょっと心配だ。
「海斗、もう半分は超えてるから今週中に16階層に行けそうじゃない?」
「ああ、そうだな。トラブルが無ければ行けそうな気がするな〜」
いつに無く順調に進んでいるので、この後1時間程探索してきりの良いところで切り上げた。
家に帰ると既に食事の用意が出来ており、今日の晩ご飯は唐揚げだった。
1日ダンジョンに潜ってカロリーを消費した体には唐揚げはぴったりでおかわりをしてしまった。
週の始まりの日なので今日はそれ程疲労していないが、明日に備えて23時には就寝した。
翌朝になり7時に目を覚ましてから身支度をして再びダンジョンへと向かう。
「それじゃあ、今日も一日頑張ろう」
「後4日連続で潜るから無理しない様に行きましょうね」
「ヒカリン体調は?」
「はい、大丈夫です。コホッ」
残念ながらヒカリンの風邪はまだ完全には治ってない様なので今日もペースを考えながら進みたい。
朝から15階層を進み3時間30分程で昨日のマッピングエリア迄来る事が出来た。
カメラとも何度か交戦したが、昨日同様シルとルシェに積極的に攻撃させる事で問題無く進む事が出来ている
「ここからは初めてのエリアになるから注意して行こう」
カメラとは違うモンスターが出てくる可能性もあるので注意しながら進んで行くが、全体の1/2を超えた辺りから分岐が増えてルートの選定が難しくなって来ている。
ゲームの様に俯瞰して全体を上から見れる訳ではないので、正解ルートに出るまで順番に全てのルートをあたって行くしかない。
「ご主人様、今度は2体です。この奥にいます」
「じゃあ、このままのフォーメーションで当たろうか」
シルとルシェを中衛に据えたまま進んでいくと、そこには今までに出現した事の無いモンスターが現れた。
「あれって、まさか………」
「どうしたの?あのモンスター初めてだと思うけど何かあるの?」
「あ、ああ………」
そのモンスターを見ると急に恐怖心が襲って来た。
「海斗どうしたんだ。おかしいぞ、調子でも悪いのか?」
「いえ、ただあのモンスターなんですけどラッターランドのお化け屋敷にいたモンスターにそっくりなんです」
「あれは恐らくアラクネだと思うが、大丈夫か?」
「お化け屋敷では、怖すぎたんですけど、あれはダンジョンのモンスターを参考にしてたのか………」
俺達の前に現れたのは、リアルホラーハウスのラスボスともいうべき蜘蛛の下半身に上半身が人間のモンスターそのものだった。
恐らく普通に出会っていればそこまで特別なモンスターでは無いのだと思うが、リアルホラーハウスの印象が強く残っているせいでいつにも増してプレッシャーを感じてしまう。
プレッシャーで俺が動きを止めている間にもこちらを認識したアラクネ2体が向かって来ているのを見てベルリアとあいりさんがすぐに飛び出して迎撃に向かう。
俺は一呼吸遅れてしまったが、気持ちを立て直して他のメンバーにも指示を出す。
「ミク、スナッチで左側の足止めを、ヒカリンは『アースウェイブ』を右側のアラクネに頼んだ」
ヒカリンが俺の指示と同時に『アースウェイブ』を唱えたが、アラクネは8本の足ですぐ様跳躍して足下のぬかるみを回避してしまった。
速い!
下半身が蜘蛛のモンスターは思っていた以上に8本の足で俊敏に動ける様だ。
「ヒカリン、『ファイアボルト』に切り替えてくれ」
俺もあいりさんのサポートに入るべく、右側のモンスターへと駆けていくが、見るとあいりさんが縦横無尽に移動するアラクネを捉え切れずに距離を詰め切れていない。
その状況に反応し、俺は走りながらナイトブリンガーの効果を発動して気配を薄めた。