A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (45)
第45話 低級ポーション
どのぐらい時間が経ったかわからない。
俺は夢を見ていた。
ルシェに連れられて地獄に来ている夢だ。
まさに悪夢だ。
「・・・さま」
「・・・・おい」
「・・・さまして」
「・・・・ごく行きだぞ」
シルとルシェの声がする。やっぱりルシェが地獄行きだと言っている。
もう地獄にいるよと思いながら、少しずつ意識が覚醒する。
「う、ううっ」
「ご主人様!!」 「おおっ!!!」
「シル、ルシェ、俺は・・・・」
「ああっ。ご主人様よかった。もうダメかと思いました。」
「ああ、地獄に落ちたのかと思ったら戻ってきたのか。よかったな」
「ルシェったら、そんなことばっかり言って。さっきまで泣いて大変だったじゃない。」
「シルなにいってるんだよ。そんなことあるわけないだろ」
二人のやりとりを聴きながら、ちょっと頭がはっきりしてきた。
俺は・・・
トラップに、はまったんだった。電撃を食らって意識が無くなったんだった。
慌てて自分の体を確認する。
特に変わったところはない。 とっさに髪の毛も触って確認するが普通だ。
いや、変わったところがないのがおかしい。
その前に受けたトラップのダメージもほとんどなくなっている。
痛みがない。
これは・・・
まだ夢の中なのか?
いやでもこれは現実だよな。
「シル俺はどうして無傷なんだ?意識がない間に何があった?」
「はい。ご主人様は電撃のトラップにはまってしまって、意識を失いました。慌てて確認したのですが、やけどを負われて、意識は戻らないし、心音も弱くなってきたので、勝手にご主人様の持っていた低級ポーションを使用しました。」
ああ、そういう事か。
俺はトラップにはまって、重傷を受けた。それをシルがポーションを使って治してくれたらしい。
「よくやってくれた。本当に助かったよ、シルありがとう。」
「いえ。ご無事でよかったです。」
低級ポーションすげー。
低級でこの効果、すげー。
低級で10万円もするだけある。
命の恩人、低級ポーション。
探索のお供に低級ポーション。
言葉では言い尽くせない感動がある。
初めて使用したが、こんなに効果があるとは思わなかった。
正直低級と侮っていた。何かの時のお守りがわりに買ったのだが、お守りどころではなかった。
一緒に買いに行ってくれた葛城さんにもありがとう。
人知れず感動した後ちょっと冷静になってきた。
俺がトラップに、はまったのって・・・
ルシェだ。2回共、あいつのせいだ。あいつがトラップのスイッチを「カチッ」と2回も踏んだからだ。
「ル〜シェ。ちょっといいか」
「え。なんだよ。」
「なんだよじゃないよね。ちょっと口のききかたに問題があるんじゃないかな。」
「え?」
「1回目は仕方ないって言ったけど、2回目も仕方がないとは言えないよな?」
「そ、それは。スイッチが悪いんだよ。私の足の下になんかあるから・・・」
「ル〜シェ!?わかってるよね。」
「い、いや。ちょっと電撃ぐらいであんなにダメージ負うと思わなかったし」
「る〜しぇ!?」
「ああ 」
「ああ?」
「い、いや。はい・・・」
「なんか言う事ないの?」
「はい・・・ごめんなさい」
「ごめんですむの?」
「ごめんなさい。もうしません。」
「もうしないって言っても、1回目の時もわかったって言ってたよね。」
「う・・・・」
「今のままじゃ怖くて歩けないから、このフロアでは、移動中はカードに戻ってもらう。」
「えーっ !?」
「え ーじゃない。それともう一つ。今後はもう少し俺への態度を優しくする事。この2つができたら、今回の件は忘れるけど。」
「うーー。わかったよ」
「わかったよ!?」
「い、いや わかりました。」
さすがに3回目は無理なので、そのままルシェをカードに戻す。
今までスルーしてきたが、今後もルシェには教育的指導が必要かもしれない。