A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (454)
第452話 ヴァンパイア
「マイハニー、君の気持ちも受け取ったよ。僕の体には電撃が走った様だ。これ程までに衝撃的な出会いがあるだろうか。ああっこれがデスティニー」
なんだこいつは?
何でまだいるんだ。
ルシェに灰にされシルにも消された筈なのにまたブーメランパンツ姿で変な事を口にしている。
「シル、間違いなく命中したよな。何で消えてないんだ」
「はい、間違い無く1度消えました。消えて再生した様に見えます」
「一瞬でか?ミノタウロスみたいに少しづつ再生する感じじゃ無いな」
「恐らくですが、あれはヴァンパイアだと思います。ヴァンパイアの不死性だと思われます」
「あれがヴァンパイア?確かに青白いけど、マッチョでブーメランパンツ?イメージと違いすぎるんだけど」
「それは個体差があるのでは無いでしょうか」
これが、あの超メジャーモンスターのヴァンパイア?
ヴァンパイアはもっとダークでスマートなイメージだがこいつはそんな俺の持つイメージを完全に破壊してくれている。
ひとまず風貌は置いておいても、こいつはどうやったら倒せるんだ?
シルとルシェの一撃がダメだとなると炎と雷では倒せないと言うことか。
ヴァンパイアといえばニンニク、十字架、銀の武器か。残念ながら今の俺は全て持っていない。
とりあえず可能性がある事からやってみるしか無い。
「ねえ海斗、それって何?」
「え!?何って十字架のイメージなんだけど」
俺は両腕を上げて 有名な豪華客船の映画をイメージして十字架を全身を使って体現してみた。
「特に効果は無さそうね」
「………そうだね」
………妙案だと思った俺が恥ずかしい。
「お嬢様方、お待たせしたね。それで………」
再び口を開いたヴァンパイアが何か言葉を発しようとした瞬間にあいりさんが『アイアンボール』を発動して鉄球がブーメランパンツの大事な所にめり込んだ。
おおぅ………。
自分の事では無いのに見た瞬間、俺の大事な所が縮み上がって文字通り背筋が凍りついてしまった。
鉄の玉が金の玉に………
あんな格好をしている奴が悪いが、あれは……死ぬ……な。
目の前にはヴァンパイアが悶絶して倒れている。
「グゥうううううう〜ふぅうううう〜」
痛そうだ。間違い無くあれは、あれがクラッシュした。
俺は追撃をかける事も忘れてヴァンパイアの様子を見守ってしまう。
「そ、そこの…お、お嬢さん。こ、こんなに強烈な愛の告白は、初めてだよ。し、死にそうな程のラブだ……」
この状況でもキャラブレしないヴァンパイアにある種の畏敬の念さえ覚えてしまう。
「気持ち悪い『アイアンボール』」
「グフォオオオオオオウ」
余程気持ち悪かったのかあいりさんが問答無用で追撃の『アイアンボール』を発動して、狙いすまされた鉄球が再びブーメランパンツの大事な所に突き刺さった。
これは……もうダメなんじゃ無いか?流石に再起不能だろう。
「お、お嬢さん。なんて情熱的なんだ……。私の魂にまで君のラブが………」
「無理!『アイアンボール』」
「グ………………………フフォ」
今度はダメージが抜ける間も与えずに3発目の鉄球がめり込んだ。
あいりさんが怖い………
あいりさんは絶対に怒らせてはいけない。
あいりさんの機嫌を損なってはいけない。
容赦がない。
これ程慈悲の無い攻撃は見たことがないかも知れない。
目の前に広がっている地獄絵図に俺の足腰が砕けそうになるのを気力を奮い立たせ必死で耐える。
俺は目の前の地獄から目を背ける様にベルリアに目をやるが、士爵級悪魔はいつに無く顔色が悪く目も虚ろに見える。
やはり悪魔でもこの攻撃は恐怖の様だ。
悪魔をも震え上がらせるあいりさんが怖すぎる。