A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (458)
第456話 変態ドラキュラの最後
「そ…そろそろ………いいだろ。もう死ぬ……」
「まだまだ大丈夫だろ。ふふっ」
「いやもう無理……あいつの前に俺が死ぬ」
「あと20秒ぐらいは大丈夫だろ」
「うううっ」
やっぱり俺は『暴食の美姫』が大嫌いだ。
この三途の川がリアルに見える感覚。
気まぐれなルシェに命を握られている様なこのなんとも言えない不安感。
今後もエリアボスが現れるのであればどうにかしてこれを使わずに終わらせたい。
ああ……俺の命が吸われていく。
人の命は軽くて儚い………
今の俺であれば誰よりも命の尊さを語る事が出来るかもしれない。
命の語り部高木海斗か……ふふっなんか良いかも。
やばい……苦痛で思考が変になってきている。あと少しだしっかりしろ俺!頑張れ俺!
「クソが……なんだその姿は?俺の贄になる為に大きく美しくなったのか?クソにしては素晴らしい心がけだ。俺が死ぬまで吸って………」
「ファイアボルト」
「……………………ア」
「どこまでも変態なのですね。ルシェ様をその様な目で見るのはやめて下さい。汚れてしまいます。見るだけで罪です。早くくたばって下さい」
今の俺に変態を気遣ってやる余裕は一切無いが、このヴァンパイアの三下感が凄い。
階層主だけあってかなりのものだったが、能力と中身は比例しないと言う事だろう。
あと少しで片がつく。この燃え盛るブーメランパンツを見るのもこれが最後だと思うと少しだけ名残り惜しい。余りのインパクトにこれから赤のブーメランパンツが夢に出てきそうだ。
「そろそろだな。ちゃんとご褒美くれよ」
「ああ」
「いっぱいくれよ」
「ああ」
「絶対だぞ」
「ああ」
「それじゃあ終わらすぞ!手間をかけさせてくれたなこの変態!さっさと消えてしまえ『神滅風塵』」
「ぐうううううあああああ〜」
ブーメランパンツ姿のヴァンパイアに向けて暴力的なまでの風が集約していき風が消えると同時にヴァンパイアの存在が消えて無くなった。
「ルシェ………はやく…」
「あと10秒あるぞ」
「ぎりぎりすぎる………はやく………」
「ふふっ、しょうがないな。それじゃあ約束は守れよ。今回も楽しかったぞ、次もたのしみにしてるからな」
ルシェ、次は…………無い。
やはりルシェは小悪魔どころじゃ無く本物の悪魔だけあってサディスティック感が半端無い。
こいつに付き合っていると身が持たない。
不吉な次回予告と共にルシェは元の姿に戻り、俺から命を吸われる感覚も消え去った。
危なかった………。
ステータスを確認するとHPは9まで減っていたので急いで低級ポーションを取り出して一気に煽ると倦怠感が和らいできた。
ただ『暴食の美姫』の影響で完調には程遠い。
流石に今度こそあのブーメランパンツを完全な消失に追いやる事ができたはずだ。
これでダメなら一旦退却する以外に方法が無い。
「ここまでやらないとダメか。他のパーティは一体どうやって階層主を倒してるんだ?」
「そもそもヴァンパイアが出現するとは限らないし、ヴァンパイアの場合は銀製の武器か何かを用意してるんでしょ」
「それにしても手強かったけどヴァンパイアってこんなに強いのか?」
「個体差はあると思うけど、強いと言うかキャラが強いわね」
「変態なのです」
「ヴァンパイア即斬」
祈るような気持ちでヴァンパイアの消えた跡を見てみるとそこには今までには無かったものが落ちていた。
「嘘だろ……あ、あれって………まさか………」
地面に落ちていたそれはエリアボスがドロップするに相応しいものが落ちていた。
メンバーが望んでいたものがそこに落ちていた。
「あれって、あれよね」
「そう……だな」
「あれが、そうか……」
「初めて見ました」
他のメンバーもドロップした物に目を奪われていた。