A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (459)
第457話 ドロップ
ヴァンパイアの代わりに地面に残されていたのは、心配していた赤色のブーメランパンツでは無く一部のメンバーが心から求めていた物だった。
ドロップしたのはシルとルシェが心から望んでいた赤い魔核だった。
「赤い魔核だな………」
かなり大きい。以前手に入れたものよりかなり大きい。
もしかしたら1000万円級かも知れない。
どうする?いや、どうすればいい?
このままあの約束は無かった事にするか?
それともこそっと普通の魔核と入れ替えるか?
「おい、海斗あれって……」
バレてる……
普通に見て赤いのだから、シルとルシェにも当然赤く見えないはずは無い。
「ああ、赤い魔核………だな」
「やっぱりそうか。ついにだな。わたしが倒したんだからいっぱいくれよ!」
「いや、だけど………」
「は〜?何か文句があるのか?約束したよな」
「それは、まあ………したけど」
「じゃあ、くれるんだろ」
「いや、でも………」
「いや、でもじゃ無い!くれるんだよな」
「ご主人様私も頑張りました。お願いします」
「あ〜これは、俺の一存では決められない」
俺の取り分だけ綺麗に分割する事など出来るとは思えないし失敗したら最悪消えてしまいそうだ。
しかもこのサイズの赤い魔核………確かに約束はしたけど、あれはあくまでも小さい小さい小指の爪の先程の赤い魔核を想定したものだった。
このサイズの赤い魔核を渡す事はモブの俺には…………
「話が違うぞ!」
「ご主人様、私も楽しみにしていたんですよ」
「それは……………」
確かに約束は大事だが時と場合によるのでは無いだろうか。
他のメンバーも流石にこのサイズの赤い魔核を「はいどうぞ」とは言わないんじゃ無いか?
「別に私はいいですよ」
「私も何の問題もないのです。だって倒したのはルシェ様ですし」
「私も勿論異議は無い。ルシェ様のあのお姿を見れただけでもう満足だ」
「え?」
みんな本当にいいのか?よく考えて見てくれ。1000万円オーバーかも知れないんだぞ。それを一口だぞ。一口と言っても実際には手から吸収だけどそんな高額の食事なんか聞いた事が無い。
「おい、海斗いいってよ。早くくれよ。シルと2等分な」
「…………………」
本当に渡すのか?これを売ればマジックポーチの新品が買えたりするぞ?
俺もお金にうるさい方では無いと思うが、流石に躊躇してしまう。
「みんな………本当にいいのか?」
「いいわよ」
「勿論なのです」
「勿論だ」
全員の許可が下りてしまった。
あ〜こうなったらどうしようもない。逃げられるはずも無い。
「分かったよ。2分割に綺麗に割れるかはわからないぞ。俺だけがバルザードで割ってみるな」
「おい、間違っても消すなよ。消したら殺すぞ!」
多分ルシェは本気だ。絶対にミスは許されない。ミスったら死ぬ。
異常な緊張感の中バルザードの刃を赤い魔核に当てて切断のイメージをのせて力を入れる。
やった。俺は成し遂げた。ほぼ同じ大きさの赤い魔核が2つ出来上がった。
「………これで満足か?」
「ああ、それじゃあくれよ」
「ご主人様お願いします」
2人共満面の笑みを浮かべている。仕方がない。
「マイロード、私の分は………」
「………………」
「おいベルリア、お前何かしたか?少しでも役に立ったのか?」
「姫………」
「一撃でもあのヴァンパイアに剣を振るったのか?お前は騎士だろ」
「…………申し訳ございません」
「まあ次は頑張れよ。頑張れば分け前があるかもな」
「姫、有難き幸せ」
そう言えば以前ベルリアも少し分けて欲しいって言ってた気がするが今回は無理だな。
ベルリア残念だが諦めてくれ。
そして次はもう無い。
これでシルとルシェへの約束は果たした。
次に赤い魔核がドロップする事が有れば必ず売却する。
これはもう決定事項だ。