A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (460)
第458話 赤いドロップ
「ようやくだな」
「ようやくですね」
俺は渋々サーバントの2人に赤い魔核を渡した。
あれ1個で一体どれ程の贅沢ができるのだろうか。
春香へのプレゼントももっといっぱい送れるだろう。
「それじゃあ頂きますね」
「じっくり味わってやるか」
見ていると2人の手から赤い魔核が吸収されていく。
「これです。この豊潤な味わい」
「おお〜。確かにシルの言ってた通りだな。普通の魔核と全く違う。魂に染みる様な味わいだな」
吸収と共に2人からは称賛の言葉と幸せそうな笑顔がはじけた。
この2人のこんな表情を見るのは初めてかも知れない。
「どこまでも続く旨味と多幸感が何とも言えませんね。正に至高の逸品です」
「これを味あわずに死ぬのはバカのする事だな。全身が溶けてしまいそうになるぞ」
「そこまで美味しいのか?モンスターミートとどっちが美味しいんだ?」
「比較は難しいですが全く違う感じです。モンスターミートは舌が喜んでいる感じですが、この魔核は、身体全身に染み渡るイメージです」
「断然この魔核だな。今までで1番だぞ。次は海斗も食べてみろよ。人生観が変わるぞっ!」
「いや、魔核は無理だ。俺の歯が欠ける。それにしてもそこまでか」
「そこまでです」
「ああ、至高だな」
2人の顔が笑顔と幸福感で蕩けてしまっている。
2人の元々整った顔が笑顔により、いつも以上に輝いて見える。
なんだかんだ言いながらいつも頑張ってくれている2人がこれほど迄の笑顔を見せてくれるのなら悪くないかも知れない。
サーバントの2人は無条件に色々な物を俺に与えてくれる。
ルシェは時々俺の命を奪うけど、たまにはお礼の意味を兼ねてこういうのも有りかな。
この2人の笑顔はプライスレスだ。
赤い魔核を吸収して幸せそうな2人の顔を見て俺も幸福感に包まれてきた。
幸福感に包まれながらベルリアに目をやると物欲しそうに2人の事を凝視していた。
その姿を見て流石に不憫に思い、今度爪の先程の極小の赤い魔核が手に入ったらベルリアにあげてもいいかな〜と考えてしまった。
どうやら俺の中でベルリアも大事なサーバントであるのは間違いないらしい。
「美味しかったです。ご主人様ありがとうございました。大満足です」
「ああ、よかったな。他のメンバーにもお礼を言うんだぞ」
「皆さんありがとうございます。美味しくいただきました」
「シル様こちらこそありがとうございます」
「シル様の笑顔が最高でした」
「シル様の為なら何度でも」
いや、あいりさん次は無い。
「わたしも満足だぞ。シルから聞いていたがこれ程とは思わなかった」
「お前もみんなにお礼を言えよ」
「わかってるって。みんなありがと〜。次も期待してるぞ」
「ルシェ様のお役に立てて私も嬉しいです」
「ルシェ様の幸せは私の幸せなのです」
「ルシェ様に次も赤い魔核を」
あいりさん、重ね重ね次は無いです。
やはりうちのパーティメンバーはシルとルシェの信者化が進んでいる。
次手に入れた赤い魔核も無条件に2人に差し出しそうで怖い。
「それじゃあ16階層に行ってみる?」
「結構疲れたからここで引き返ししてもいいと思うけど」
「1度降ってマーキングだけはしましょう」
「私も先程の戦いで『アイアンボール』の使い過ぎでもうほとんどMPが残っていないんだ」
やはりメンバーは思った以上にヴァンパイア戦で消耗したようだ。
俺自身は精神的な疲労はあったもののほとんど役に立つ事は無かったのでまだ余裕があったが、メンバーの意見を考慮して16階層の階段を降ってからすぐに『ゲートキーパー』で1階層に引き上げる事にした。
春休みの最初の週で15階層を攻略出来たので充分に満足出来る成果と言えるだろう。
身体は疲労しているが明日明後日はまた春香と会えるので自然とテンションが上がって来た。
それにしても同じ赤でも魔核じゃなくてブーメランパンツがドロップしなくてよかったな。
恐らく一定の確率であれの可能性もあった気がするがあれがドロップしても誰も幸せにならない所だった。