A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (462)
第460話 水族館は龍宮城
今死んだらこの時は永遠になるのだろうか………
水族館が楽し過ぎる。
元々魚好きなので興味はあったが、今日の水族館の魚達は光り輝いて見える。
深海魚の提灯アンコウですら眩いばかりの煌めく光を放っているように見えてしまう。
今までと同じ物を見ているはずなのに世界が昨日までとは全く違う色を帯びているように錯覚してしまう。
それは全て春香と一緒だから。彼女の手が俺の手に触れているからだ。
緊張から手汗をかいてしまっているが、間違っても自分から離すことは出来ない。
「綺麗だね」
「うん」
俺達はクラゲの水槽の前に来ていたが、暗くなったスペースに水槽の中から照らされた7色の光をクラゲが透過して幻想的な光景を演出している。
「よかったら、俺に写真撮らせてもらえるかな」
「うん、いいよ」
カメラの使い方は以前春香から習ったので問題無い。
カメラをクラゲに向けて画面に映る映像を確認する。
「春香何してるの?」
「クラゲを撮るのに邪魔かなと思って」
「違うよ、俺が撮りたかったのはクラゲをバックにした春香だから」
「……うん。それじゃあ、お願いするね」
再度画面を覗き込むが、思った通り幻想的な空間に春香が合わさって、この世のものでは無いのかと思えるようなシーンが映り込んでいたのですぐにシャッターを切る。
やばい。可愛い。天使がいる。いやこのシチュエーション的に海の女神か?
この写真どうにかもらえないだろうか。是非ともスマホの待ち受けにしたい。
この写真を待ち受けで毎日眺めていたら幸せだろうな〜。
いや、でも俺がこの写真を待ち受けにしてたら気持ち悪いだろうか。
「こんな感じだけど、どうかな」
「うん、いいと思う。海斗写真撮るの上手いよね」
「そ、そうかな。春香の教え方が上手かったんだよ」
その後も順番に水槽を見て周りメインの巨大なアクリル水槽まで進んだ。
「すごいな。マンタが何匹いるんだ?」
「20匹よりも多い気がするけど、大きいね」
「泳ぎ方が優雅だよな〜」
「こんなのに海で出会ったらびっくりしちゃうね」
「水槽越しでこの大きさだから間近で見たらびっくりするだろうね」
「海斗はスキューバダイビングとか興味ないの?」
「今までやる機会は全く無かったけど、大学生とかになったらやってみたいかもしれないな」
「じゃあ、大学生になったら一緒に行こうね」
「あ、ああ。大学生になったら」
実はダイビングへの憧れは以前から持っている。海の中で色とりどりの魚に囲まれるのには憧れる。
ただ春香の大学生になったらと言う言葉が結構響いてきた。
もし春香と同じ大学に行けなかったら……そもそも大学生になれなかったら一緒にダイビングに行く事は叶わない。
誘ってくれた嬉しい気持ちと同時に行けないかもという不安が襲ってきた。
何がなんでも王華学院に受かって見せる。死んでも受かってみせる。
春香と水槽の中を眺めながらマンタも写真に収めたが、水槽が大きすぎて逆に上手く撮るのが難しいようだった。
昼食を水族館の中の軽食コーナーで済ませてから、午後からイルカショーを2人で観る事になった。
イルカショーを観るのは久しぶりだったが、本当にすごかった。
スタッフの人がイルカに乗って一緒に泳いでいたのには思わずテンションが上がってしまったが、正直左手にずっと触れられている春香の右手が気になってしまい、ショーに集中する事が出来なかった。
その後も色々な館内イベントを観ながら夕方迄水族館にいたが、飽きる事は無かった。やっぱり水族館はいいな〜。
ラッターランドよりもゆっくりしているし、待ち時間も無く春香と手を繋いで廻れるので最高だ。
この素晴らしい場所に必ずまた来ようと心に誓って家路についた。