A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (475)
第473話 防御の陣
「そろそろ離した方がいいんじゃないか?」
「どうしてでしょうか」
「いやだ」
「咄嗟に動けないというか、両手が塞がってる状況が怖いんだけど」
「私がお守りするので大丈夫です」
「気持ち悪いから照れ隠しはいらないぞ」
最初は2人と手を繋いでいると幸せな気分だったが、ここはダンジョン、この3人一緒のお散歩スタイルはそろそろ解除したいのだが、その旨を2人に伝えると拒否されて余計にしっかりと手を握って来た。
「マイロード、姫!上です」
『鉄壁の乙女』
阿吽の呼吸でベルリアの警告が聞こえた瞬間、シルが『鉄壁の乙女』を発動して俺に向かって落下して来た溶解液のような物を遮断してノーダメージで切り抜ける事が出来た。
「シル助かったよ」
「ご主人様をお守りするのが私の務めですので」
「だから言っただろ!手を繋いでれば安心なんだよ!」
「シルはまあ分かるけどルシェは別に手を繋ぐ必要ないんじゃないか?守ってくれるわけでもないし」
「な、なにをふざけた事を言ってるんだ!わたしはいざという時のために控えてるんだ!そんな事も分からないのか。バカ、バカ、バ〜カ!」
やはりルシェとはまともな話が出来ない。精神年齢が見た目かそれ以下なので疲れる……
ただ、2人の言うようにこのお散歩スタイルも否定しきれないところが困ったものだが、他の探索者には絶対に見られたく無い。いや見られてはならない。
「ご主人様、敵モンスターです。今度は3体いるようです」
「打ち合わせ通り、1体はルシェが倒してくれ。シルもいつでも行けるように待機しておいてくれ」
相性の問題か2体の鬼でも結構苦戦したので今度はルシェにも戦ってもらう。
前方に現れたのはやはり鬼が3体。
親子にも見えるが、大鬼、女鬼そして子供の鬼が並んで現れた。
子供の鬼も他の2体とは違い鎖鎌のような武器を手にしているが、大体シル達と同じぐらいの背丈だ。
「ルシェ、子供の鬼を頼んだぞ!ヒカリン『アースウェイブ』を大鬼に!」
残念ながら俺は女鬼との相性が悪いようなのでベルリアに任せて、俺はあいりさんと共に大鬼に向かって行く。
ヒカリンの『アースウェイブ』は確実に大鬼の足を止めてくれている。
「海斗、とどめは私に任せてくれないだろうか。やってみたい事があるんだ」
「えっ?ああ、もちろんいいですよ。俺が注意を引きます」
あいりさんに何か策があるようなので俺は大鬼の注意を引く事に専念する。
足運びが使えない状態なので圧倒的に優位に攻撃をかける事が出来るが、腕力にものを言わせて長刀を振って来るので気は抜けない。
バルザードには既に氷を纏わせてリーチ差を埋めるべく魔氷剣で斬りかかる。
相手は足を取られているので後方に回り込めば勝ちだ!
俺は斬り合いながらも距離を保ち、徐々に大鬼の後方に回り込む。
あいりさんの援護も有り、完全に後ろを取ったので無防備な背中に向かって斬りかかるが、踏み込んだ瞬間、カウンター気味に刀による突きが俺に向かって放たれた。
完全に虚をつかれ既に踏み込んでいる為に避ける事が出来ない。
肩越しの後方への突きが完全に俺の身体を捉えているのでこのままではやられる。
そう感じた瞬間にスイッチが入った。
ナイトブリンガーを発動してはいなかったが、追い詰められたこの状況で自然と『アサシン』の能力が発動したようで、大鬼の突きが少しだけゆっくりになり剣筋を目で追う事が出来るようになる。
その剣筋に向かって、既に構えていた魔氷剣を当てるように動かして俺への攻撃をズラす。
大鬼の刀は魔氷剣の刃に触れて軌道を変え、ナイトブリンガーの肩口を掠めて後方に抜けた。