A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (483)
第481話 ルシェ無双
「ベルリア、チンタラしてるんじゃ無いぞ。さっさとどけ〜!」
ルシェが魔杖トルギルを構えてベルリアと交戦中の小鬼に向かって駆けていく。
「わたしだってこのぐらい朝飯前なんだ〜!」
ルシェはベルリアを押し退けると小鬼に向かってトルギルを振りかぶってからぶっ叩いた。
正直技術も何も無い、ただのフルスイング。
小鬼もトルギルを止めるべくさっと鎌で応戦したが
「パキ〜ィン」
トルギルが鎌に触れた瞬間に鎌の刃の部分が完全に折れて破壊されてしまった。
一体あの杖は何で出来てるんだ?
どこをどうやったら一撃で鎌を折る事が出来るんだ?
ベルリアが結構斬り結んでいたと思うが、その時に既に破損していたのか?
鎌を失った小鬼は後方に逃げ出し、距離を空けた瞬間今度はルシェに向かって分銅を投げつけて来た。
「こんな物!効くわけなだろ〜!」
ルシェが迫って来る分銅に向かってトルギルを一閃すると分銅も砕け散ってしまった。
ルシェ強すぎないか?
お前は完全な魔法職、純然たる後衛だろ。
ステータスだってシルと比べても魔法職寄りのものだろ。
それが何で近接戦闘でそんなに強いんだよ。
どう考えてもベルリアより強く無いか?
これが士爵と子爵の差なのか?
それともルシェが特別なのか?
武器を完全に失った小鬼は一瞬怯んだようにも見えたが、覚悟を決めたのか素手でルシェに襲い掛かった。
「近寄るな。臭い!」
ルシェが嫌そうに襲って来た小鬼をトルギルで薙ぎ払った。
「ガフゥッ!」
ルシェの一撃は小鬼の左腕を粉砕して、胴体にも大きなダメージを残した様で、小鬼は既に虫の息と化している。
「杖が汚れるから嫌なんだよ。わたしの手を煩わせずに勝手に自分で消えて欲しいぐらいだぞ」
流石はルシェ。圧倒的な上からのお言葉。流石は王族。庶民でモブの俺には一生口にする事は出来ないお言葉だ。
小鬼は最後の力を振りしぼり、残った右腕で攻撃をかけようと試みるが、あっさりとルシェに阻まれてしまった。
「もう死んでしまえ。流石にしつこいぞ!しつこい奴は嫌いなんだよ、どうせ死ぬんだからさっさと逝ってくれ!」
そう言いながらルシェが今度は小鬼の右腕に向かってトルギルを振るって粉砕し、完全に死に体となった小鬼に向かって、更に滅多打ちにしてボロボロになった小鬼は程なく消えてしまった。
「ちょっとはスッキリしたけど、やっぱり前に出るもんじゃ無いな。疲れた!」
「いや、お前が勝手に出ただけだろ」
「海斗、勝手にってなんだ、勝手にって」
「俺はルシェに待機って言ったよな」
「そ、それはそうだけど、お前らが苦戦してチンタラやってたから助けてやったんだろ」
「ふ〜ん、別に助けてくれなくても、ベルリアがきっちりと仕留めてたと思うぞ、なあベルリア」
「マイロード、お言葉ですが私ではとどめをさす事は難しかったかもしれません。流石はルシェ姫様です。ご助力感謝いたします」
ベルリア……俺はお前を擁護してやってるんだぞ?
それを………
「ルシェ、もうこれだけやれるんだから前衛に出たらいいんじゃ無いか?前衛に出たら毎回敵にとどめをさせるぞ」
「バ、バカ!バカなのか。わたしはか弱い女の子だぞ!危ないだろ!怪我したらどうするんだ」
「か弱い女の子………」
これほどの強さと容赦の無さでか弱い女の子は無いだろ。
ルシェがか弱かったら俺は超か弱い男の子だぞ!
と言うよりも世の中の殆どの男は超か弱い事になってしまう。
「ルシェ………流石にか弱いって言うのは無理があるだろ」
「ふ、ふざけるな〜。海斗お前はわたしの盾だ!わたしを守る義務があるんだよ。死んでもか弱いわたしの事を守る義務があるんだよ!」
「なっ………」
俺がルシェの盾!?この前ルシェが俺の盾だって言ってなかったか?
主従関係が逆転して無いか?
サーバントを死んでも守るマスターって聞いたことがないんだけど。
まあ何かあったら言われなくても守るけど。一応妹だしな。ただ先に俺が死んだら流石に守れないけどな。