A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (489)
第487話 鬼の首
今度は『ドラグナー』の銃弾が鬼の胸部を捕らえ、胸の真ん中に風穴を開ける事に成功した。
この一撃は確実に心臓を貫いたので流石に仕留めただろう。
ただ先程の事もあるので念の為に注意は切らさずに鬼を注視する。
「ガウアアア〜!」
胸に銃弾をくらい心臓を失ったはずの鬼は咆哮を上げ、三度動き始めた。
胸の穴も徐々に閉じて来ている。
間違いない。この鬼は再生能力持ちだ。赤いミノタウロスやヴァンパイアと同種の能力を持っている。
まずい。もしヴァンパイアに匹敵する再生能力を持っていれば俺1人では倒せないかもしれない。
「あいりさん!こいつ、再生能力持ちです。気をつけてください!」
「分かった!大丈夫だ!」
あいりさんの事も気になるが、俺の方が問題だ。目の前の鬼に集中する。
『ドラグナー』の一撃が必殺となり得ない以上、MPの残量を考えてもこれ以上は撃てない。
俺はマジック腹巻にドラグナーを仕舞い込み、バルザードを両手で構えて鬼に向かって行く。
流石に二撃を放ったので俺の事は認識しているようで、間合いに入った瞬間に正拳突きを放って来た。
幾ら腕が長いと言ってもこの距離は届かない。
そう思った瞬間に俺を衝撃が襲った。
「なんっ………」
風?いや理力の手袋に近い?
拳が飛んできて間合いの外から一撃入れられてしまった。
間合いはどのぐらいだ?俺がバルザードで斬りつけるよりも遠い気がする。
俺は立て直すために一旦距離を取るが鬼が距離を詰めて来て俺に向かってラッシュをかけて来た。
拳戟は突き出された拳の直線上のみの様なのである程度予測出来るが、数が多すぎる。
バルザードだけでは防ぎきれない。
『アイスサークル』
ヒカリンの詠唱と同時に俺と鬼の間に氷柱が現れ鬼の攻撃を遮断してくれる。
「海斗、ちんたらしてるんじゃないぞ。負けそうじゃないか。わたしが助けてやろうか?」
「ああ、お願いするよ。ルシェ、頼んだ。助けてください」
「なっ……………。男があっさり助けを求めるんじゃない!」
何て面倒臭い奴なんだ………
助けてやろうかって聞くから素直に助けてくれって言ってみたのにこの対応はどう言う事なんだ。
絶対に断っても怒ってただろ。
「ルシェ、とにかく頼んだぞ」
「この腑抜け!しょうがないから助けてやるよ。燃えて無くなれ!『破滅の獄炎』」
ルシェの獄炎が鬼を包み込み、そのまま燃え尽きてしまった。
どうだ?これで倒せたか?
燃え尽きた鬼に視線を向けるが復活する気配は無い。どうやら倒せたようだ。
俺以外の3人に目を向けるが、ベルリア以外は既に戦闘を終えていた。
シルは4刀を物ともせず、どうやら一撃で片をつけてしまったようだったが、ベルリアは2刀で4刀を凌駕し、よく見ると鬼の腕を斬り落としたのか鬼の腕は既に3本に減っている。
腕が再生していない所を見ると、あの鬼は再生能力を有して無いのかもしれない。
見ている側からベルリアの剣速がどんどん上がって行き、俺の眼には4刀以上を振るっている様に見える。
最後は『アクセルブースト』を使い鬼を十字に斬り裂き倒す事に成功したが、ベルリアが斬り伏せた敵は復活する事は無くそのまま消滅した。
やはりあの鬼は再生スキルを持ってはいなかったようだ。
「あいりさん、あいりさんの倒した鬼は再生スキル持ちじゃなかったですか?」
「ああ、海斗が言ってた様に再生スキルを持ってたな」
「それじゃあ、どうやって倒したんですか?俺はルシェに頼ったんですけど」
「海斗、そんなのは常識だろう」
「常識ですか?」
「ああ、鬼の常識だ」
「鬼の常識ですか?」
「ああ、だから鬼烈の刀の常識だ」
また鬼烈の刀か………見てない俺に作中の常識を言われても困る。
「どうすればいいんですか?」
「ああ、それは、倒せない鬼は首を落とせばいいだけだ」
「首を落とせば倒せるんですか?」
「ああ、常識だろう」
「知りませんでした…………」
頭も心臓も効果無かったが、首を落とせば良かったのか。
常識なのか。知らなかった………
ルシェの攻撃は首も何も関係無く全部焼いてしまったから倒せたのだろう。