A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (492)
第490話 あっちの氷は寒い
敵の鬼の刀を受け止めたが、交わっている刃の部分から冷気が吹き出している。
先程見た氷の刃の能力だろうが、こちらも氷の刃なのだからこの攻撃は効かない。
「おあっ!」
なぜか手が、魔氷剣を持つ手が冷たくなって来た。
嘘だろ?
普段魔氷剣は氷の塊でも全く問題なく握れるのに、持ち手が急激に冷えて来た。
明らかに斬り結んでいる相手の能力の影響を受け始めている。
自分の氷は大丈夫で敵の氷はダメって一体どんな理屈なんだ。
いずれにしてもやばい。
このままでは俺の手が凍傷になってしまう。
「ミク!援護を頼む!」
俺はミクに援護射撃を頼み、火球が着弾すると同時に後ろに下がり一旦離脱した。
手が、俺の手が、かじかんで感覚が無くなって来たせいで剣を握る力が入らない。
このままではまずい。完全に押されているだけじゃなくて追い詰められている。
俺は『ドラグナー』を手に取り引き金を引く。
蒼い糸を引いた弾丸が鬼の頭部を捕らえ、動きを止める。
そのまま鬼を観察するが、消滅する気配は無いのでやはりこの鬼も再生スキルを持っているらしい。
鬼の動きが止まっている間に更に後ろに下がり態勢を整えるが、まだ手に力が入らない。
どうする?
完全に手詰まりだ。他のメンバーも全員交戦中なので前線でのフォローは望めない。
剣を振るっても今の手の感じでは首を断ち切る事は出来なさそうだ。
「シル、ルシールを召喚してあいりさんの下へ行かせてくれ!」
「ご主人様は大丈夫ですか?」
「ああ、なんとかいける」
俺も余裕はないが、あいりさんも単独でやり合っているので苦戦しているのが見える。
俺は自分の相手をとにかく倒す。
そうしてる間にも鬼が動き始めようとしていたので再び『ドラグナー』を構えて狙いを定める。
狙うは頭。
『愚者の一撃』
俺にとっての奥の手とも言うべき必殺の一撃を『ドラグナー』の銃弾にのせて放つ。
普段よりも強い光を放った銃弾が放たれたと同時に着弾し、鬼の頭を吹き飛ばした。
『愚者の一撃』は鬼の頭ごと上半身の一部をも吹き飛ばして、そのまま消滅に追いやった。
やはり首を切断しなくても強力な一撃で首ごと破壊するのは有効らしい。
鬼の消滅とほぼ同時に『愚者の一撃』の発動による反動で急激な疲労感が襲って来た。
HPを確認すると8まで減少していたので急いでマジック腹巻から低級ポーションを取り出して、すぐさま飲み干した。
マジックポーション程ではないが不味い。
味覚が完全には戻っていないはずなのに不味いというのがしっかりと認識出来てしまうのは人体の不思議としか言いようがない。
体力が回復するのを待ちながら周囲の状況を確認する。
シルは当然の如く勝利を収めており、ルシェはボロボロになった敵に向かって獄炎を放ったところだったのでこれで終わりだろう。
残るはベルリアとあいりさんだが、あいりさんにはルシールが付いており、圧倒しているのが見て取れるので問題ないだろう。
最後のベルリアの相手は2刀使いでお互いに斬り結んでいるが、相手の剣からは風が吹き出されている様で、通常の剣を使用しているベルリアは少し手こずっている様だ。
単純に剣の重さも刀の方が軽く、アドバンテージがありそうなので単純に武器の性能差が大きいのだと思われるが、こればかりは仕方がないのでベルリアの技量に期待するしかない。
そのうち鬼が刀をドロップしてくれれば今度こそベルリアに使わせてあげようとは思う。
「ミク、ヒカリン2人でベルリアのフォローを頼む!」
俺もベルリアのフォローをすべく、ベルリアの敵に向かってバルザードの斬撃を飛ばした。