A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (493)
第491話 自己選択
ミクがスピットファイアで炎弾をヒカリンが炎雷を放ち、俺の放った斬撃と続け様に命中した。
鬼の動きが止まった瞬間を狙ってベルリアが2刀でアクセルブーストを使い一気にけりをつける。
2刀を同時に振るい鬼の首を落とした。
あいりさんもルシールと連携して鬼を倒したようで無事に5体の鬼を倒す事に成功した。
「倒せて良かったけど、俺は結構やばかったよ」
「海斗さん、もしかして『愚者の一撃』を使ってませんでしたか?」
「うん、そう。敵の冷気でバルザード越しに手がかじかんで剣が上手く振れなくなってしまったんだ。それで鬼の首を落とす方法が無くなって仕方なくね」
「海斗さん、最初から魔氷剣を使ってましたよね」
「そうだけど」
「魔氷剣を使ってたのに冷気で手をやられてしまったのですか?」
「うん、俺も大丈夫だと思ってたんだけどダメだったみたい」
今回の苦戦は俺の認識ミスが大きかった。
勝手に魔氷剣には同種の攻撃は無効だと思い込んでいたが、実際には普通にダメージを受けてしまったのが大きな問題だ。
今後は氷の刀を使う鬼とは、斬り結ぶ事は避けなければいけない様だ。
「次からは正面からやり合うのは極力避けるよ」
「そうですね。それがいいかもです」
やはり俺の本質はモブ。
格好をつけて主人公の様に正面から立ち回るのは向いていないのかもしれない。
こそっと近づいて死角から刺すスタイルが俺のパターンだ。
ただ最近敵のレベルが上がって来たせいか気配を察知されている感じなので、隠密戦法が使いづらいのも事実だ。
せめて2人で組んで戦う時には心がける様にしたいが、5体とか出てくると絶対無理だな。
「おい、海斗『愚者の一撃』を使うぐらいだったら最初からわたしに頼れ!」
「え?どう言う意味?ルシェが俺の分も頑張ってくれるって事か?」
「ああ、頑張ってやるよ。どうせHPを消費するなら、わたしが消費してやるからさっさと『暴食の美姫』を使えって」
「ああ………そう言う事か……。うん大丈夫、間に合ってるから」
「間に合ってるってどう言う事だよ」
「うん、大丈夫、少しでも期待した俺が馬鹿だった。だからもういい」
「いや、よくないだろ。海斗の『愚者の一撃』よりもわたしの『暴食の美姫』の方が圧倒的に上だろ!しかも燃費も上だ!」
ルシェ、人のHPを燃費って言うな。
お前に吸い取られる感覚が我慢できないんだよ。
しかも毎回毎回俺の命を弄んでくれるから、絶対に使ってやらない。
『愚者の一撃』はHPを消費するが俺の意思で発動しているんだ。
ルシェに完全依存する『暴食の美姫』とは全く異なる。
「うん、本当にダイジョウブダカラ」
「くっ……バカにしやがって!」
バカになんかしてないよ。嫌なだけだから。
いずれにしても先程の戦闘はそれなりに消耗が大きかったのは間違いない。
俺はHPが無くなりポーションを使い、シルにはルシールを喚び出してもらったのでMPを普段以上に使わせてしまった。
いざとなればシルにもマジックポーションを飲ますという手もあるが、極力それは避けたい。
幼女にあれを飲ますのは罪悪感から気が引けてしまう。
ルシェに飲ませるのは、ある意味ありだと思ってしまうがシルには出来ない。
「ミク、さっきの戦闘なんだけど言い辛いけどスナッチがあんまり存在感ないような気が……」
「そうね。それは私も分かってる。ヘッジホッグにしてもフラッシュボムにしても使い時が難しくて私が自分に集中してしまってるのが原因なのよ」
「例えば今回みたいに数がいる場合は、前衛の攻撃に先駆けてスナッチがヘッジホッグで先制攻撃をかけてもいいんじゃないか?」
「そうね。次はやってみるわ」
「敵の数が多いと結構苦戦するからスナッチが活躍してくれると助かる」
スナッチの初期スキルのかまいたちだけでは、そろそろきつくなって来ているのは分かるが、ヘッジホッグやフラッシュボムは十分に通用すると思う。
ただシルやルシェの様に完全に自分の意思で動くタイプでは無いのでミクの負担が増えてしまうのは止むを得えないが、今後の探索にはスナッチの活躍が欠かせないのでミクとスナッチには頑張ってほしいと思う。