A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (494)
第492話 スナッチの力
俺は、マジックポーションだけで無く低級ポーションも飲んだおかげでMPは全快しているが、ちょっと疲れた。
16階層の戦闘も段々と厳しくなって来ているので精神力が削られて来た。
ダンジョンでの探
索は、ほとんどが無駄の積み重ねというか繰り返しだ。
初めてのエリアを進む場合、最終的には唯一つの正解ルートをマッピングするのだが、それまでに廻った他のルートは基本的に全て無駄足となる。
つまりは、ダンジョン探索とはルートを見つける作業というよりもルートを潰していく作業にほとんどの時間を追われているのだ。
行き止まっては戻ってマッピングをするの繰り返し作業なので、効率よく進めている時はそれ程疲労を感じないが、上手く先に進めない時は、想像以上に徒労感と共に神経が磨耗して行く。
まさに今はその状態に陥っている。
マッピングは進まないのに敵は強くなり交戦の度に消耗していっている状態だ。
「ヒカリン、最近何か変わった事とかあった?」
「特に無いのです。あ、でも今朝あいりさんに鬼烈の刀ブルーレイBOXを借りたのです」
「あいりさんブルーレイBOX持ってたんだ」
「良かったら次見ますか?」
「あ〜俺はいいや。家にブルーレイプレイヤーがないから。家は未だにDVDなんだ」
「そうですか。残念ですね。見ると絶対にダンジョンでのテンションが上がりますよ」
「そんなもんかな」
「鬼の秘密満載なのです。絶対戦闘にも役立つ事間違いなしなのです。コホッ」
「ヒカリン、ちょっと前から少し咳してないか?」
「別に大丈夫なのです。ほんの少しだけ喉がイガイガするだけなのです」
「そう、それならいいけど、早めに風邪薬か何か飲んだ方がいいよ」
「大丈夫ですよ」
以前の階層はジメジメ湿っていたりもしたが16階層はどちらかというと乾燥気味なのでそのせいもあるのかもしれない。
「ご主人様、ご準備お願いします。敵モンスター3体です」
「それじゃあ、ベルリアとシルが1体づつで、俺とあいりさんでもう1体を。ミク、スナッチを攻撃参加させてくれ」
数が3体だけなので、先程よりも戦い易いはずだ。
先に進んで行くと袴の鬼が2体とあれは………蜘蛛?いや鬼か?
1体は背中から蜘蛛の脚が生えているが、頭からは角もしっかり生えているので鬼蜘蛛だろうか。
「どうする?」
「ご主人様、私はあれ以外がいいです。虫っぽくって嫌です」
「じゃあ、あれはベルリア頼んだぞ!」
「マイロード、お任せください」
鬼蜘蛛をベルリアに任せて俺達は袴の鬼に向かうが、俺たちよりも先にスナッチが前線に飛び出した。
スナッチが3体の鬼の前をスピードに乗って横切ると同時に『ヘッジホッグ』を放つ。
無数の鉄のニードルが3体の鬼を襲った。
ニードルが致命傷にはならないが、鬼とはいえ鉄のニードルを全身に受けて痛みを感じないはずはないので、かなりのダメージを与える事に成功した様だ。
完全に出足が鈍った鬼に向かって駆けて行くが、あいりさんに先に行ってもらい俺はあいりさんの背後につき身を隠す様に向かって行く。
ヘッジホッグにより刺さったニードルは再生スキルの影響を受けない様で刺さったままになっており、継続的にダメージを与えている様に見える。
確かに再生スキルは傷に対しては効果を発揮するのだろうが、刺さって埋まった異物に対しては、干渉する事が出来ずに効果がないかも知れない。
スナッチはそのままベルリアのフォローに回ることにした様で、鬼蜘蛛の前まで行ってから『かまいたち』を発動して背中の蜘蛛の脚を2本落としてから後方へと素早く退避した。
先陣をきる役目としては、ほぼ完璧にこなしてくれたと思う。
ここのところ出番が無く影の薄かったスナッチだが、十分に戦力になるところを見せつけてくれた。