A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (498)
第496話 鎧斬り
グレートソードが俺に向かって振るわれるが、この一撃は予測できた物なのでしっかりと剣筋を見極めて回避する。
回避と同時に再び前に踏み込むが、俺にとってはまだ間合いが遠いのでもう一歩踏み込もうとするが、避けたグレートソードが再度俺に向かって襲ってくる。
完全に間合いに入ってしまっているので後方に回避する事は出来ない。
魔氷剣で攻撃を防ぐが、相手のグレートソードを受けた瞬間俺の身体ごと持っていかれて弾き飛ばされてしまった。
「〜っつ……」
相手の攻撃は完全に見切って止める事が出来たが、相手の膂力と剣の威力が俺の耐えられる力を大きく超えてしまっていた。
予定では、相手の剣を受け止めてからいなして、そのまま首に魔氷剣を叩き込むつもりだったが、完全に予定が狂ってしまった。
すぐに起き上がって、敵の追撃に備えるが、既に鬼は目の前に迫っており、俺は距離を取るために後方に駆けた。
残念ながら正面からの斬り合いでは分が悪いので一旦引いて隙を窺う。
「ヒカリン、フォローを!」
ヒカリンの『アイスサークル』を期待して声をかけるが援護が無い。
ヒカリンの方に目をやるが、あいりさんのフォローに入っている様で、こちらまで手が回らない様だ。
恐らくあいりさんも苦戦しているのだろう。
「私がフォローするわ」
ヒカリンの代わりにミクから返事があり火球が飛んでくるが、鎧に阻まれて効果が薄い。
こうなったらまたあれか?
でも、あれはそうそう連発する様なスキルじゃないしな。
俺は選択を迷いながら移動を続けるが、決定的な打開策を思いつかない。
「スナッチ、お願い!」
再びミクの声がしたと同時に大きな光の弾が鬼に向かって放たれ、鬼の胸の部分に大きな穴を開けた。
どうやらスナッチが『フラッシュボム』を発動した様だ。
『フラッシュボム』をくらい完全に動きの止まった鬼に向かって、そのまま首に魔氷剣を振るう。
首も鎧で覆われているので通常攻撃では無く魔氷剣が鎧に触れる瞬間に切断のイメージをのせる。
少しの抵抗感を感じながら魔氷剣は鎧を裂き鬼の首を落とす事に成功した。
スナッチのお陰でなんとか倒す事は出来たが、かなり危なかった。
それにまだ終わっていない。
他のメンバーの戦況に目を向けるが、シルは鎧程度を問題にするはずも無く相手を倒していたが、ベルリアにとっては鎧ごと鬼を切断する事は容易では無かったようで、押しながら倒しきれず、結局痺れを切らしたルシェが止めをさした様だ。
問題はあいりさんだが、グレートソードと薙刀の間合いがほぼ同じの為、少し遠い間合いからお互いに牽制しあっており倒せてはいない。
ヒカリンも魔法でフォローはしているが致命傷を与えるには至っていない。
俺はすぐさまナイトブリンガーの効果を発動してあいりさんが交戦している鬼の後方を目指す。
視界に入るのを避けるべく、大きく迂回して後方10Mの位置につける。
俺の意図を理解したヒカリンとミクが意識を前方に集中させる為に攻撃を連発する。
焦りは禁物だ。
はやる気持ちを抑えて、無音で近付いていく。
走れば2秒も有れば詰めれる距離だが、無音を意識して近づくと10Mは思った以上に遠い。
1M近づく毎に自分へのプレッシャーが増大していく。
相手では無く自分自身によってかけられていくプレッシャーは、剣の届く距離の一歩手前で最大化され、喉が乾く。
魔氷剣の効果が切れたバルザードをゆっくりと構えて素早く振り切り、後方から鬼の首を落とす。
「ふ〜。疲れた〜」
俺としてはやはりこのやり方が1番有効だが、疲れる。
全ての戦闘をこれでやり通すには相当な精神力が必要とされると思うが、俺にはまだ無理かもしれない。