A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (513)
第511話 百鬼夜行
「閉じ込められた……」
「くそっ!やられた。そこを退け!」
「どうするんだよ」
「いいからどけ!さっさと開け!『破滅の獄炎』」
ルシェが閉じてしまった扉に向かって獄炎を放つが扉が開く様子は無い。
ただ、獄炎により周辺部分が明るく照らされて、今まで見えていなかった室内の様子が見て取れた。
「なっ………………」
なんと俺達から少し離れた所には、無数とも思える程の数の鬼が立っていた。
「うそだろ。ボスって1体じゃ無いのか?この数は一体……」
「海斗さん、これはまずいのでは……」
「でもやるしか無いのよね」
「百鬼夜行……」
「あいりさん?」
「これは、恐らく百鬼夜行だ。百鬼を超える数の鬼の出現。しかも階層主の部屋とくればそれしか考えられない。ダンジョンでは聞いた事は無いがアニメの定番だ」
「アニメの定番……。百鬼夜行」
あいりさんのとんでも根拠だが、百鬼夜行なら俺も聞いた事はある。
確かにこれは百鬼夜行なのかもしれ無いが、という事はこの鬼達は百鬼もいるという事か?
以前のスタンピードでも100体はいなかったかもしれない。
15階層のミノタウロスが全部で100体ぐらいだったはず。ただあれは30人以上で
当たって攻略した。
鬼の強さは幅があるが、1体毎の強さは平均するとミノタウロスと比べても大きく劣るものではない。
その鬼を100体相手に単独パーティで攻略?
どう考えても無理だろ。
ゲーマーが言うところの無理ゲーだ。
これがゲームならリセットするか、放置するところだがこれは現実だ。
そんな事は出来るはずも無い。
「シル、『鉄壁の乙女』を絶対に切らすな!みんなそこで迎え撃つぞ!」
シルに壁を背にした状態で『鉄壁の乙女』を発動してもらう。
今まで散々危ない場面を経験したせいで感覚が麻痺してしまったのかもしれないが、百鬼を前に絶望感と焦燥感に苛まれながらも、頭ではどうにかこの窮地を切り抜ける方法が無いか必死で考えていた。
「ルシェ、遠慮は無しだ!近づいて来た奴には『破滅の獄炎』をお見舞いしてやれ!みんなも近づいて来た奴から順番に倒すぞ!」
これしか無いと思う。
『鉄壁の乙女』で攻撃を防ぎながら、近づいた鬼を片っ端から倒して行く。
持久戦を覚悟して敵を待ち構えるが、ルシェの獄炎と俺の声に反応した鬼が一斉にこちらに向け殺到して来た。
『鉄壁の乙女』が防いでくれると分かっていてもこの数に寄って来られると怖い。
高速でこちらに向かって来たのは小鬼の一団だ。群を抜いたスピードでこちらとの距離を詰めて攻撃を仕掛けて来るが光のサークルがそれを阻む。
「そんなおもちゃみたいなのが効くはずないだろ!消えろ『破滅の獄炎』」
「氷漬けにしてやります『アイスサークル』」
「スナッチやっちゃいなさい」
スナッチもヘッジホッグを放ち群がった小鬼にダメージを与える。
俺は凍った小鬼に止めをさすべくバルザードの斬撃を放つ。
ベルリアとあいりさんも、光のサークルの中から近づいて来た小鬼に向かって武器を振るい、ダメージを与えて行く。
倒した小鬼の後ろからは2刀使いの鬼が割って入って来て、こちらをめがけて刀を振るって来た。
「ベルリア倒せ!」
俺も向かって来る鬼にバルザードを振るうが、極力MPを節約する為に魔氷剣は温存し戦う。
「お願い効いて!『幻視の舞』」
ミクは直接的な攻撃は効果が薄いと踏んで『幻視の舞』を発動するが、最前列で
刀を振るっていた鬼の一体が、こちらに向けて振り続けていた刀を止めた。
効いたのか?
挙動不審になった鬼に向けてあいりさんが『斬鉄撃』を放ち首をはねる。
流石のあいりさんもこの場では呼Qを使う余裕はなかった様で通常の技を繰り出している。
場を弁えてくれてよかった。