A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (514)
第512話 百鬼猛攻
前線に出張って来る鬼を順番に倒してはいるが、何体倒せたのかよく分からない。
薄暗い中常に鬼が押し寄せて取り囲まれているので、全体が見えず鬼の数がよくわからない。
「ルシェ、ペースが落ちてるぞ!もっと燃やし尽くしてくれ!」
「分かってるよ。別にペースなんか落ちてないだろ。敵が多すぎなんだよ!『破滅の獄炎』」
ルシェの言う事ももっともだ。
恐らく鬼を倒している数はルシェが1番多いとは思うが、次から次へと鬼が押し寄せるので、光のサークルの中とは言え息つく暇がないのだ。
「ご主人様、もう少しで『鉄壁の乙女』の効果が切れます」
「シル、切れると同時もう一度発動してくれ。みんなは、切れた瞬間を全力で凌いで!ヒカリンはタイミングを合わせ融合魔法で爆発させて欲しい」
『鉄壁の乙女』は上手く連続発動させれば、見た目にはほとんど切れ間無く発動し続けている様に見えるが、消えてから次が発動する間にコンマの数秒のタイムラグが発生するので、万が一の事も無い様に徹底する。
「ご主人様、効果が切れます。『鉄壁の乙女』」
効果が切れる瞬間を狙って、俺達は放出系のスキルを一斉に放つ。
ヒカリンの融合魔法による爆発とルシェの獄炎で最前線の鬼達は全て吹き飛び十分な時間を稼ぐ事が出来たので、俺達は再び籠城戦に入るが、流石に鬼達も力押し一辺倒では『鉄壁の乙女』を崩せないと悟ったのか少し距離を置いた状態からスキルによる攻撃を仕掛けて来た
もちろん光のサークルがスキルによる攻撃も完全に防いでくれているが、距離を置かれた事で剣による直接攻撃が届かなくなってしまったので、自動的に遠距離攻撃の術を持たないベルリアが完全に無力化してしまった。
俺は斬撃を飛ばし、あいりさんも『アイアンボール』に切り替えて攻撃を続けているが、遠距離攻撃だけでは致命傷を与える事が出来ずにルシェの攻撃に頼る事になってしまっている。
先程まで前衛の3人とルシェの4人で数を減らしていたのに今はルシェだけが鬼の数を減らす事が出来ている。
「ヒカリン、融合魔法を敵の真ん中に頼む!」
「分かったのです」
ルシェの獄炎に次いで威力があるのはヒカリンの融合魔法なので発動してもらう。
『ドガアアアアン』
融合魔法が爆音と共に炸裂して鬼の集団に穴を開けるが、鬼も学習して今度は密集陣形を取るのをやめて少数で分散し始めた。
人型のモンスターだけあって思った以上に対応が早い。
敵はまだまだ数が多い。
ルシェ1人で全部倒す事は不可能だ。どう考えても先にMPが尽きてしまう。
「ご主人様、もう少しで『鉄壁の乙女』の効果が再び切れます」
「分かった。もう一度頼む」
もう『鉄壁の乙女』の効果が切れるのか。
鬼達に引かれたこの状況で『鉄壁の乙女』をかけ続ける事はルシェと同じくMPの枯渇を招く以外にあり得ない。
完全に以前のスタンピードの時の事が頭をよぎる。
「皆さん『鉄壁の乙女』をもう一度かけます。いきますよ『鉄壁の乙女』」
再び光のサークルが張られるが、鬼がスキル攻撃に特化していた為に結構危なかった。
何度か繰り返せば、このタイムラグをいつか抜かれる。
手詰まりに近い状態で焦燥感を覚えながらも、バルザードの斬撃を飛ばしていると、敵の集団の後方から鬼ババアが数体こちらに向かって歩いて来ているのが見えた。
まさかとは思うが、こいつらの精神攻撃って『鉄壁の乙女』で防ぐ事が出来るのか?
光のサークルの中にとどまっている今の状態は格好のターゲットになり得るのでそんな事は無いと思いたい。