A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (515)
第513話 鬼ババアの恐怖
「ルシェ!鬼ババアを倒せ!」
こちらに向かって来る鬼ババアに嫌な予感を覚え、潰す為にルシェに指示を出す。
「ババアは大人しく死んでろ!『破滅の獄炎』」
ルシェの獄炎が向かって来ていた鬼ババアの1体を燃やし尽くすが、まだ3体残っている。
俺もバルザードの斬撃を飛ばし命中させるが、再生能力を持つ鬼ババアを倒し切る事が出来ない。
鬼ババアに対する嫌な感じが拭えない。俺には第6感の様なものは全く無いが、なぜかヤバイと感じる。
「ルシェ!残りも倒せ!」
ルシェが獄炎を放ちもう1体を倒すが、まだ2体いる。
「お爺さん…………お爺さんが………」
俺の後方から声が聞こえてくる……
これはミク………
明らかに鬼ババアの精神攻撃を受けている。
『鉄壁の乙女』は物理攻撃には鉄壁を誇る。音も風も光も防いでくれる。
だが、精神攻撃は物理的な攻撃とは一線を画す。
僅かばかりの心配はあった。
しかし今まで光のサークル内でダメージを受けた事が無かったので、その心配は頭の中から消し去っていた。
だが、俺の悪い予感が的中してしまった。
どうする?どうすればいい。
このままサークルの中にとどまれば、シルとルシェ以外はやられてしまう。
「ヒカリン!今すぐミクを起こせ!ベルリア、あいりさん!打って出るぞ!」
「海斗、やるのか。わたしもやるぞ」
「ああ、頼む。シル『鉄壁の乙女』が解けたらお前も頼む!」
「はい、お任せください。ご主人様は絶対に守って見せます」
幼女に守られる俺……
ここまで来ても格好つかないが、頼もしい限りだ。
この数の鬼を相手に気配を消したところで、効果は無いだろう。
「ウォーターボール」
俺は魔氷剣を発動して覚悟を決める。
絶対にここを乗り切って見せる。
「あああああああああああ〜!」
身体の底から叫び声をあげ強張る身体と心を鼓舞して光のサークルから踏み出す。
俺の後にベルリアとあいりさんも続くが、サークルを出た瞬間に今まで距離をとっていた鬼が殺到する。
俺とベルリアとあいりさんでトライアングルを形成して鬼を迎え撃つ。
数が多いのでMPは節約したい。したいがこの数を相手に手加減など出来るはずがない。初手から全力で臨む。
目の前に迫る袴の鬼に向かって『ドラグナー』を放ち間髪入れずに首を刎ねる。
眼前の鬼が消失した瞬間、次の鬼が迫って来る。
先手を取りたいが陣形を崩すと全方位から一気にやられるので1人で突っ込んで行く事は出来ない。
次に迫って来た2刀使いの鬼が刀を振るい斬りかかって来るが、動きが緩慢に見える。
これはアサシンの効果が発動している。
俺は迫り来る刀を掻い潜り魔氷剣を振るい首を刎ねる。
俺の動きが明らかに鬼のスピードを凌駕している。
極限とも言えるこの状態でアサシンの力が覚醒しているのを感じるが、鬼を倒しながらも、どこか冷静な俺が焦りを感じる。
アサシンの効果を発動して、自分だけが素早く動けた事は今まで数度あるが、必ず代償とも言うべき反動が来て、身体中を痛みが襲って来た。
俺が今までこの効果を発動した事があるのは戦闘中単発のみだ。
それでも次の日には全身の筋肉痛に見舞われた。
それが今は単発で終わらす事は出来ない。
可能であれば数十回数百回と続けて発動させる必要があるが、果たしてそんな事が可能なのか?
俺の身体は大丈夫なのか?
考えをまとめる間も無く次の鬼が襲って来て、先程と同じ2刀使いが2刀同時に繰り出して来た。
今は目の前の敵に集中する。
2刀の軌道がハッキリと見える。このままいくと斬られる。
俺はバックステップを踏み間合いを外すと俺の鼻先を刀がすり抜けていく。
まだ、覚醒状態は続いている様だ。