A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (516)
第514話 覚醒
刀を避けて追撃が来る前に踏み込み鬼の首を刎ねる。
いける。このままこの戦闘中だけやり過ごせればいい。
今度は鬼蜘蛛と西洋鎧の鬼が2体同時に襲いかかって来た。
それぞれが斬りかかって来るが、この限定された間合いでグレートソードの一撃はきつい。
『ファイアボルト』
鬼蜘蛛に向けて炎雷が放たれ、動きを阻害する。
「ヒカリン助かる!」
俺は『ファイアボルト』により作られた時間の隙間に鬼蜘蛛目掛けて飛び込み、胴体を袈裟斬りにし、返す刀をで首を刎ね、西洋鎧の鬼に向かって『ドラグナー』を放つと同時に魔氷剣を首に突き立てた。
「く……うあっ………」
俺の背後からあいりさんの呻き声が聞こえて来たので慌てて後方に目を向けるが、あいりさんが鬼に押し込まれていた。
この密集状態で薙刀は不利。手数を出せずに敵の二刀に押し込まれている。
俺は躊躇する事無く後方に向けて『ドラグナー』を放ち青い閃光が鬼の頭を吹き飛ばし、あいりさんがそのまま鬼の首を刎ねる。
「海斗、すまない」
このままだとあいりさんが持たない。
あいりさんの事を侮っているわけでも舐めているわけでも無いが、この状況で一番先に呑まれてしまうのはあいりさんだ。
「ヒカリン、ミク! あいりさんの所に援護を集中してくれ!」
どうにか残りのメンバーにフォローしてもらうしか無い。
「全然減らないな。こいつら蟻か? どっから湧いて出てるんだよ。さっさとくたばれ!『破滅の獄炎』」
ルシェの獄炎が前方の鬼を焼き払うが焼け石に水状態で鬼の数が減った気がしない。
ざっと考えてみても既に三十体近くは葬り去っているはずだが一向に減った感が無い。
最初に百鬼いたとすれば残り七十体か?
そもそも初めに百鬼だったのかどうかも分からない。
終わりの見えない戦いに体力と精神力が削られていく。
再び目の前に現れた四本腕の鬼と対峙するが四本の刀を器用に振りこちらに攻撃を仕掛けて来る。
四本対一本の段階でほとんど反則だと思うが、ルールがあるわけでは無いのでどうしようも無い。
普段の俺であれば、正面からあたって勝てる相手では無い気もするが、この場に於いてはそんな事は言っていられない。
相手の四本の刀全てに神経を集中する。
刀が振り下ろされるが、全て同時では無く少しずつズレている。
目でそのズレを追いながら、隙間に身体を滑り込ませながら避けきれない刀に魔氷剣を合わせていなす。
今のこの状態が所謂ゾーンと呼ばれるものなのかそれとは全く違う時間の流れを超越したものなのかは分からないが、今はこのスキルに縋り鬼を撃つ。
滑らした魔氷剣をそのまま鬼の首に突き立て身体をぶつけて薙払うと同時に魔氷剣の効果が切れたので、鬼が近づかない様ドラグナーを構えて再び魔氷剣を発動する。
「あっ……」
魔氷剣を再度発動して構えた瞬間、腕と足に痛みが走る。
もう来たのか。
心配していたリバウンドがこのタイミングで現れてしまった。
まだ動けない程では無いが、後どれだけ動けるか分からない。
低級ポーションのストックは三本。最後まで持つかは分からないがやるしか無い。
痛む足を動かし目の前の鬼に向かってステップを踏みながら魔氷剣を振るう。
「……っつ」
腕の筋肉と腱が痛む。
これが噂に聞く五十肩?いや腱鞘炎か?
世の中のサラリーマンの人達も痛みを抱えて頑張ってるんだ。このぐらいの痛みで音を上げてる場合じゃ無い。
俺は痛みを無視して集中力を高めて鬼の首を狙う。
流石に鬼も俺の狙いを理解して首を守る様にして刀を構えているので『ドラグナー』を放ち、胴体に風穴を開けてから、がら空きになった首に魔氷剣を叩き込み鬼を倒した。