A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (517)
第515話 消耗
「ぐうっつ……」
身体が軋む。肩が痛い。手首が痛い。筋肉だけでは無く関節も痛い。
今低級ポーションを飲むべきなのか判断に迷う。
このペースで飲めば最後までもたない気がする。
俺の迷いなど関係無く、鬼が襲って来る。
子鬼が分銅を投げて来るが、しっかりと見えているのであっさりと躱すが距離があるのでこちらからは行けない。
僅かばかりの膠着状態を破る様に大型の鬼がこちらに向けてタックルを仕掛けて来た。
避ければ背後にいるあいりさんが背中から直撃を受けてしまうかもしれないので迎撃するしか無いが、この勢いを止めるにはどうすればいいんだ。
「そこをどきなさい『神の雷撃』」
シルの声と共に雷が走り向かって来ていた鬼が消滅した。
「シル、助かった」
「ご主人様、私も一緒に戦います」
「ああ、頼んだ。ルシェ、ミクとヒカリンの前で戦ってくれ!」
シルがここにいると言う事はミクとヒカリンも『鉄壁の乙女』の加護が無くなったという事なのでルシェに守ってもらうしか無い。
「分かってるって。それにしても数が減らないぞ!どっかに女王蟻みたいなのがいるんじゃ無いのか? あ〜さっさと地獄に落ちろ『破滅の獄炎』」
「本当に群がって来て困りますね。そこをどいてください。我が敵を穿て神槍ラジュネイト」
シルとルシェの攻撃が鬼を消滅させ一瞬空白が出来るがすぐに次の鬼で空間が埋め尽くされる。
あいりさんに一瞬目を向けるが、ミクとヒカリンが交互に援護して持ち直しているようだ。
ただこれもいつまで持つか分からない。
ベルリアを見ると、淡々と剣を振るっている。一切の派手さを捨て、正に剣を振る悪魔と化し二刀を振るい続けている。
通常の攻撃に混ぜて『アクセルブースト』を使い鬼にとどめをさしていくが目の前に立ちはだかる西洋鎧の鬼の首を『アクセルブースト』を使用して刎ね飛ばした瞬間に左手に持っていたバスタードソードが根本から完全に折れてしまった。
「ああっ!」
思わず声を上げてしまったがベルリアは僅かに根元の刃が残ったバスタードソードを目の前に現れた鬼に向かって投げつけて残ったブロードソードで斬りつけた。
あの折れたバスタードソードは25万円だった方だ。
B品の瑕疵がこんなところで出てしまったのか?
いや、これだけ酷使すれば折れて当然か?
ベルリアの『アクセルブースト』で酷使され使用限界を迎えたのだろう。
ただ今この時に折れるとは厳しすぎる。
そもそも、もう一本のブロードソードも同じ時に購入したものだ。まさかとは思うが、同じタイミングで折れたりしないよな。
「ご主人様、集中を!」
ベルリアに気を取られていたが俺にも余裕は無い。
前方の鬼に意識を向けるが、今まで見た事の無いタイプの鬼だ。
「鬼ジジイ?」
風貌は鬼ババアを彷彿させるがどう見ても男の鬼だ。
鬼ババアと対をなす鬼ジジイか……
俺は魔氷剣を構え、鬼ジジイが来るのを待ち受けるが、鬼ジジイは俺との距離
四メートル程の距離で足を止めた。
何だ?何で止まったんだ?
不思議に思いながらも気を緩めずに魔氷剣の斬撃飛ばすが、魔氷剣を振るった瞬間剣を、握っている左手の指にはめていたレジストリングか砕ける感触を理力の手袋の内側から感じた。
俺のはめていたレジストリングの効果は対気絶用だ。
つまりこの鬼ジジイは気絶のスキルを俺に向かって放って来たという事だ。
こいつはヤバイ!
次の瞬間、躊躇う事なく『ドラグナー』を放ち鬼ジジイにとどめを刺すべく前方に大きく踏み出して首を刎ねる。
鬼ババアもヤバかったがこの鬼ジジイのスキルはヤバイ。
俺のレジストリングも使い捨てなのでもう無くなってしまった。