A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (520)
第518話 ポーション
「マイロード、ポーションを頂いてもよろしいでしょうか?」
「どういう事だ? 別にダメージくらった様には見えないけど」
「はい『ヘルブレイド』を使い過ぎてHPとMPが減ってしまいました」
「ああ……」
そういう事か。確かに俺も撃って撃って撃ちまくれとは言ったしな。俺の責任でもあるが、そこは調整して欲しかった。
俺の持っている低級ポーションは残り一本だが、幸いにもシルとルシェにも一本ずつ持たせているので、この一本をベルリアに渡してもまだ余裕はある。
「ベルリア、これで最後だからな! スキルは少なめでいってくれ」
「はい、ありがとうございます」
俺は自分の持っている低級ポーションを取り出してベルリアに渡し、俺は、奥に見えた鬼ババアに向けて『ドラグナー』を放った。
「『斬鉄撃』 ふぅふぅ……。くぅ……『アイアンボール』 ぐっ……」
やはりあいりさんは限界が近い様に見える。
このままではまずい。
「シル、ルシールを喚んでくれ。あいりさんのフォローにつけてくれ!」
燃費を考えると持久戦のこの場面での召喚は悪手だが、今あいりさんを休ませなければ取り返しがつかなくなる。
「わかりました。我が忠実なる眷属よここに顕現せよ『楽園の泉』ルシール来て」
シルの召喚に応じてルシールが姿を現した。
「ルシールあいりさんのフォローに入って出来る限り鬼を倒せ!」
「お任せください。あなた達、海斗様達の邪魔です。お還りください『エレメンタルブラスト』」
風が巻き起こり前方の鬼が巻き上がる。
「あいりさん、ポーションを飲んで休んでください!」
「ああ、すまない」
低級ポーションを飲むとHPは回復するが、完全に疲れが取れるかというと少し違い、体の芯に溜まったものは残った感じがする。
HPの表示とは異なり俺の筋肉痛も完全には回復していないので、ポーションを既に二本飲んで居るが、俺の動きも徐々に落ちて来ている。
「ヒカリン、アイスサークルをあいりさんの前に頼んだ」
ほとんど効果は無いかも知れないが、氷の壁があるだけで精神的な余裕が変わってくるはずだ。
俺はそのまま戦いを続けるが、突然膝に力が入らなくなり踏ん張りがきかない。
腕はまだ動くので魔氷剣の斬撃を飛ばして応戦するが、このままでは、鬼にとどめをさすために踏み込む事ができない。
「ルシェ、預けてあった低級ポーションをこっちに頼む!」
こうなったら少し早いがポーションに頼るしか無い。
「無い」
「え?」
「だからもう無い」
「無い?」
「ああ、さっきわたしが飲んだ」
「わたしが飲んだのか?」
「MP がちょっとキツくなって来たから飲んだ」
「……」
ちょっと待ってくれ。完全にルシェに渡してあったポーションも計算に入っていたのに飲んで、もう無い?
しかもMP がきついんだったらマジックポーションだろ!
何普通のポーションを飲んでるんだよ。
ルシェ……お前に渡しておいたのが間違いだった。
今度からルシェに渡すのはマジックポーションにしよう。
これが後悔先に立たずというやつか。
しかもこの切迫した状況で痛すぎる。
「シル、預けてた低級ポーションは……」
「もちろんありますよ。どうぞお使いください」
ああ……やっぱりシルは女神だ。ルシェとは全く違う。
だが、ルシェのせいでこれが最後の一本となってしまった。
かなりまずい状況だが、動けないこの状況はもっとまずい。
俺はシルから低級ポーションを受け取り、一気に飲み干した。
本日三本目の低級ポーションなのでそろそろお腹が水膨れで一杯になって来た。
膝に力が戻り動かせる様になったが、下手な動きをすると横っ腹が痛くなりそうだ。