A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (528)
第526話 むしり取られる
ミクとあいりさんがそれぞれドロップアイテムを使用する。
「私のは、風じゃなくて雷みたい『ライトニングスピア』の魔法を覚えたわ」
文字通り、雷の槍だと思うが、恐らく雷の槍が敵を目掛けて飛んで行くのだと思う。名前を聞いただけでもかなり強力なスキルだと推察出来るが、雷系のスキルは結構レアな気がするのに、 K ー12には雷使いが多い気がする。
いずれにしても、ミクの攻撃力が上がるのは大歓迎だ。
「私のスキルジュエルは『ダブル』というスキルだった」
「『ダブル』ですか? どんなスキルなんですか?」
「MPを消費して攻撃が倍になるスキルだ」
「倍ですか? それは威力って事ですか?」
「威力じゃなくて手数のようだな」
手数が増えるとはどういう意味なんだろう。速度が倍になると言う意味か?
とりあえず戦力が増強されたのは間違いないが、今回どちらのスキルも当たりの部類に入るんじゃないだろうか。
そして他のメンバーにも確認してみたが鬼殺しが発現したのは俺だけのようだ。
あまり他の探索者からもスレイヤー系のスキルを聞いた事が無いので俺にはスレイヤー系のスキルが発現しやすいのかもしれないが、俺はやっぱり何かの特異体質なんだろうか?
「それじゃあ17階層に降りてからすぐに帰りましょうか」
「そうだな。流石に疲れたな」
「そうね。私も燃え尽きたかも」
「久しぶりにMPが切れて疲れたのです」
「ヒカリン、まだ顔色が良く無いみたいだけど大丈夫か?」
「はい疲れたのと少し風邪気味だったのもあって」
「じゃあ、みんな早く帰って休もう」
みんなの総意でもう帰ろうとしたその時だった。
「ちょっと待て」
「なんだよルシェ」
「まさか忘れてるんじゃないだろうな」
「一体何のことだ?」
「お腹が空いたに決まってるだろ〜!」
「え? だって魔核をあれほど渡しただろ」
「その後もしっかり戦ってお腹が空いたんだよ!」
「うそだろ……シルもか?」
「はい。がんばりましたので」
「マイロード私もスキルを連発しましたので」
戦闘中にスライムの魔核は使い果たしてしまったのでもう無い。
ここにあるのは鬼の魔核のみ。
みんなを見回してみるが、みんな満面の笑みで頷いている。
これは、みんなそうしようと言うことだな。
「分かった。それじゃあ鬼の魔核だけど大きいからな一人三個だ」
「海斗! 燃やされたいのか? 百体のモンスターを倒して魔核が一人三個? ふざけるな〜!」
「海斗流石にそれはないんじゃない?」
これでやり過ごせればと思ったがダメだったか。
「う〜んそれじゃあ特別に一人五個だ。大サービスだぞ」
「もういい。海斗燃えて無くなれ! 三個も五個も変わらないだろ。もう今後働かないからな。見てるだけでいいんだな」
「海斗、少し渋すぎるんじゃないか?」
これでもダメか……
痛いが仕方が無い。
「分かった。俺も男だこれが最後だ。これ以上は何を言われても無理だからな。わかったな。一人十個だ。これ以上は無理。限界だ」
「ふふん、初めからそうしてればよかったんだよ。それじゃあ早速くれよ」
俺は三人にそれぞれ十個の魔核を分配する事にした。
まあ人数割りしたらこんなものだろうから仕方が無い。今回はサーバントの三人の力無しには攻略出来なかっただろうからこのぐらいのご褒美は許容範囲内だ。
「やっぱり働いた後の魔核は最高だな。あ〜おいしいな」
「そうですね。今日は流石に頑張りました。おいしいですね」
「マイロード、魔剣を二刀も頂いた上に、この魔核。このベルリア、マイロードの為なら死も厭わずに頑張ります。魔核おいしいですね」
三人ともニコニコしながら吸収している。
「あ〜シル様とルシェ様の嬉しそうなお姿が尊いのです」
他のメンバーも三人の表情を見て喜んでいるようなので良かった。
三人が魔核を吸収し終えてから俺達は17階層への階段を降りてすぐさま『ゲートキーパー』を使って帰還した。
「魔核とかの売却は後日でもいいですか?」
「そうね。今日はもう帰りましょうか。じゃあ売却はまた連絡するわね」
「それじゃあ、また来週」
「また、土曜日に会おう。次は17階層だな」
俺はメンバーと別れて戦斧と鎧をロッカーに戻してから家に帰って、汗が気になったのでまずシャワーを浴びたが、夕飯は定番となりヘビーローテーション化しつつあるカレーを食べてからすぐに寝た。