A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (533)
第531話 天国と地獄
昨日は最高に幸せだった。
そして今日目を覚ますと昨日よりは少しだけ身体が動く様になっている。
具体的には首が動くようになったが、まだベッドからは一歩も動けない。
これでもう一本低級ポーション飲んだらいけるのか?
なんとなく無理な気もして来た。
そして、俺に入院してから最大の試練が待ち受けていた。
朝寝ていると、女性の看護師さんがやって来て
「オムツを交換しますね」
「…………」
女の人が交換する……のか。
もちろん動けないこの状況で大変ありがたく、また止むを得ない必要な事だとは理解しているし、看護師さんには感謝しか無い。
だが、思春期真っ只中の俺、しかも病気では無く、ダンジョンで無理をして重度の肉離れだけの俺。
かなり恥ずかしい。
「はい、失礼します。それじゃあ楽にしてくださいね」
動けなくても感覚がないわけでは無いので、目を背けてもしっかりと何をされているかは分かってしまう。
「ううっ……」
これは間違っても春香やミクには見せられない。
二人の事だから馬鹿にしたり面白がったりはしないと思うが、俺が耐えられない。
せめて青少年の為にもオムツをかえてくれるロボットか何か早急に開発されないものだろうか?
恥ずかしくて看護師さんの顔がまともに見れない。
「はい、終わりましたよ」
「……ありがとうございます」
本当に感謝しかありません。看護師さん日々のお仕事、いつもありがとうございます。
この御恩は一生忘れません。
恥ずかしくて顔を見る事は出来ないが、看護師さんはリアル天使だ。
俺だけじゃなくて毎日病気の人達の為に働いてくれている。
本当にありがたい。
普段病院に来る事が無いので、今まで実感する事が無かったが、こうなってみて看護師さんだけじゃなく医師の人や病院に勤務する人達のありがたみを感じる。
ただやっぱり恥ずかしい……
母親以外の女性に見られた記憶はないので……うぅっ。
僕お嫁に……
朝、人生最大とも言えるような大きなイベントを乗り越えて夕方になると春香がやって来てくれた。
「海斗、調子はどう?少しは良くなった?」
「うん……結構首が動くようになったよ」
「それじゃあ今日もポーション飲んでみる?」
「お願いします」
昨日と同様に春香にポーションを飲ませてもらう。
昨日飲んだ時よりも随分と身体が軽くなった感じがする。
「どうかな?」
「ああ、大分楽になって来た」
「動ける?」
春香に言われて腹筋に力を入れて起き上がろうとするが、背中が少し浮いたがすぐに力尽きてしまった。
「まだちょっと難しいけど、かなり良くなってるよ。ありがとう」
「私は何も出来てないから」
「そんな事ないって。ポーションだって春香が飲ませてくれないと自分では飲めなかったし、ご飯だって春香のおかげで食べれるんだから。ありがとう」
「そう言ってもらえると来た甲斐があるよ」
そして今日も春香に晩ご飯を食べさせてもらう事が出来た。
この日も病人用の水分多めのおかゆと味の薄い野菜の煮物と塩気の薄いスープだったが、最高に美味しかった。
春香の手には魔法が宿っているのかもしれない。
春香が食べさせてくれるだけで病院食が三つ星レストランの料理を完全に凌駕している。
やっぱり病院って素晴らしいな。
病院に運ばれた時は一刻も早く退院しなければと思っていたが、これならしばらくいてもいいかもしれない。
むしろ家でカレーを食べるよりずっと幸せを感じてしまう。
「海斗も早く退院できるといいね」
「う、うん」
「クラスも新しくなったばっかりだし、新しくクラスメイトになった人達とも馴染まないといけないでしょ」
「あ、まあ、そうかも」
俺としては真司や隼人、春香に前澤さんがいればそれでいいかと思ってしまっていたのだが、少しは交友関係を広げた方がいいのかな。