A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (537)
第535話 売却
「それで買取はどうですか?」
「魔核は85個で百五四万円になります。戦斧の方は魔力を帯びているので魔剣扱いとなりまして五百万円です」
「それじゃあ魔核は全部売却でお願いします。戦斧は一旦持って帰ってもいいですか?」
「はい、それでは魔核の買取金額はパーティの皆様の口座に均等振り込みでよろしいですか」
「はい、それでお願いします」
一個当たりの単価は思っていたよりも高かったが、やはりシル達に十個ずつ渡したのが響きかなり金額が目減りしてしまった。
「海斗、戦斧は売るのやめるの?」
「いや、もう一箇所持っていきたいところがあるんだ」
そう言って俺は、ダンジョンマーケットへ向かいおっさんの店に進んだ。
「こんにちは」
「おお、坊主か。今日はいつもとは違うお姉ちゃん連れてんのか?」
「ああ、俺のパーティメンバーです」
「おいおいマジかよ。お前ってまさかのハーレムパーティだったのか? 信じられね〜けど、時代が変わったのか……こんな奴が」
相変わらず失礼なおっさんだな。
「今日は買い取りの見積もりして欲しいんですよね」
「珍しいじゃね〜か。物は何だよ」
「これなんですけど」
そう言って俺は戦斧をカウンターの上に置いた。
「戦斧か……」
「はいドロップしたんですけど俺達は使わないんで売りたいんですよ。ギルドでも見積もり取ったんですけど、せっかくだからいつもお世話になってるお兄さんのお店にと思って」
「そ、そうかよ。流石お得意様だな。俺の事を思い出してくれて嬉しいぜ! ちょっと待ってろよ、鑑定してくるわ」
そう言っておっさんは嬉しそうに戦斧を持って奥に下がっていった。
あんなに嬉しそうなおっさんを見たのは『ドラグナー』を俺が買った時以来だ。結構あのおっさんってチョロインキャラだったりするのか?
ただ強面おっさんのチョロインキャラ……世間に需要がない気がする。
十分程待っているとおっさんが戻ってきた。
「おい坊主、これ魔戦斧じゃね〜か。それなりに需要のあるもんだぞ。お前ら何階層でこれ手に入れたんだ?」
「十六階層のボス部屋です」
「なるほどな。それじゃあ坊主、今は十七階層に潜ってんのか?」
「いえ、それはこれからです」
「やっぱハーレムパーティ組むだけあるじゃね〜か。人は全く見かけによらね〜な。それで値段だがよ、せっかく持ってきてくれたんで頑張らせてもらうぜ。五百五十万でどうだ?」
おお、いきなり五十万円アップした。
これで売ってもギルドより得だな。
だけど……
「お兄さん、この魔戦斧結構人気なんですよね。じゃあ買ったらすぐ売れたりしますよね。売る値段っていくらですか?」
「ああ!?」
おおっ、怖い。怖いけどここは引くところじゃない。
「いやだってお兄さんのお店にこれがあったらすぐ売れちゃうじゃないですか。だから俺もこのお店に是非売りたいんですよ。でも……もう少しなんとかなりませんか? 俺達も命懸けてるんです」
「………そうだな。俺が悪かった。六百出そう」
おおっ! 更に五十万上がった。流石にこれ以上は強欲すぎるか……
「わかりました。それでお願いします」
「坊主、俺が思ってたより熱い奴だったんだな! これからもよろしく頼むぜ!」
そう言っておっさんが笑顔で握手を求めて来た。
やっぱりこのおっさんチョロインキャラか……
まあ人に好意的な握手を求められて悪い気はしないのでしっかりと両手で握り返しておいた。
すぐにお金を入金してもらってから店を後にする。
「海斗、今の何なの? 海斗って交渉とか得意だったの? 百万円も高く買ってもらえたじゃない」
「いや、いつもあのおっさん相手に春香が交渉してるのを見てたから真似してみただけ」
「海斗、真似出来るだけ大した物だが、春香さんもかなりのものらしいな」
「そうですね。値段交渉は俺よりも数段上だと思います」
とにかく百万円高く売れたので、魔核のマイナス分を取り返す事が出来た。
これで、ミクに立て替えてもらってた七十万円を無事返す事が出来る。
よかった。