A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (543)
第541話 十七階層
俺は今十七階層を進んでいるがまだモンスターとの戦闘は起こっていない。
サーバントの新しいスキルも試して見る必要があるが、シルの『祈りの神撃』は
発動時の俺の消費MPがはっきりしないので使いづらい。
最初に使ってMPが大幅に削られてしまうと探索に支障が出てしまうので様子を見ながら使ってみたい。
「ご主人様、モンスターがいます。前方に四体です」
「よし、じゃあ話した通りで行こう。ルシェの『炎撃の流星雨』も試してみたいから機会があれば使ってみてくれ」
「ああ、わかった」
俺もバルザードとドラグナーを携えて前方へと進んで行く。
「なあ、シルあれって……」
「そうですね。ドラゴンですね」
「そうだよな、だけど少し小さいか?」
「あれはドラゴネットだと思います」
ドラゴネットか。小型もしくは子供のドラゴンだと思うが、見た目は完全にドラゴンだ。
ドラゴネットとはいえドラゴンには違いないので油断は出来ないが、ダンジョンに潜る者にとってドラゴンには一種の憧れがある。
以前の階層で超小型のやつと戦ったがあれはドラゴンというよりはトカゲだったし龍もちょっと違う感じだった
ドラゴンといえばブレスと爪や牙そして尻尾での攻撃か。
とりあえずブレス以外は近接専門だと思うのでまずは遠距離から攻撃をかけてみるか。
「おい、海斗! やっていいのか?」
「ルシェやれるのか?」
「わたしのことを馬鹿にしてるのか? やれるのか? やれない筈無いだろう。バカなのか?」
「そう。じゃあせっかくだからやってみる?」
「じゃあ、その小さい目を大きく見開いてしっかりみてろよ。大きな蜥蜴が集まったところで蜥蜴は蜥蜴だろ『炎撃の流星雨』」
あ、これ結構やばいやつかも。
『ゴゴゴゴゴゴゴ』
上からなのに何故か地響きのような音をたてながら、大型の火球が降って来た。
かなりの広範囲に一気に降り注ぐ。
「みんな下がれ!」
あまりの熱量に身の危険を感じて、全員で後方へと走って避難するが、避難している最中にもドラゴネット4匹に向けて無数とも思える火球が降り注いでいる。
眼前が火球に埋め尽くされてドラゴネットの姿が見えなくなってしまった。
確かに『爆滅の流星雨』の隕石と比べると一発一発の威力はかなり落ちるようにも見えるが、数の暴力ともいえるような火球による集中攻撃の熱量は凄まじく、後方に下がっても、熱風が襲って来る。
これは反則級だ。多分この階層ではオーバーキルだろう。十六階層のボス部屋でこれが使えていればもっとあっさり攻略出来ていたと思う。それ程の火力。
「やったか?」
流星雨が止み、前方が晴れてくると、そこにドラゴネット四匹の姿は既に消え去っていた。
「ふふん。海斗どうだった?」
「どうだったって、ドラゴネットが瞬殺というかいなくなったんだけど……」
「当たり前だろ! 蜥蜴なんか燃やして終わりだ」
「一応蜥蜴じゃなくてドラゴンな」
「どっちも一緒だろ」
俺はルシェのステータスを確認して驚いたが、何とMPが五十も減っていた……
今まででMPを一度にこれほど使用した事は無かった。
ルシェの200を超えるMPがあったとしても四発が限界、しかも他の攻撃もあるので実際には一回の探索で一度か二度使えればいい方だろう。
「おい! 忘れてるだろ」
「えっ? 何を?」
「魔核だよ魔核! お腹が空いたんだ」
「ああ、それじゃあこれ」
俺はルシェに魔核を三個渡した。
「馬鹿にしてるのか? 全然足りないぞ」
三個で足りないのか。やはり威力に比例して欲しがる魔核の量も増えているのか?
「それじゃあこれだけな」
そう言って二個を追加して五個を渡す事にした。
「ご主人様、今回は私は何もしていないので大丈夫です」
「ああ、シル助かるよ。正直このペースでみんなに渡してたらもたない。省エネで行こうか」
探索の一発目からこのペースで使っていたらいくら魔核が二百近くあってもあっという間に無くなってしまう。今はシルの厚意に甘えておこうと思う。