A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (562)
第560話 別れる
「凛、頼んだぞ!」
「任せてよ『ファイアスピア』」
凛さんが放った炎の槍がワイバーンの右翼に命中し墜落させる事に成功して、地上に落ちたワイバーンに向けて男性陣が一斉攻撃を始めた。
「オラ〜! さっさとくたばれ!」
「そろそろ、終わりじゃない?」
「なかなかしぶといな〜」
メンバーが総出で攻撃をかけ、ワイバーンはあっという間に消滅してしまった。
「高木くん、その銃を撃つところを見たよ。見た目通りカッコいいな。やっぱり見た目とエフェクトは大事だよな。憧れるよ」
「ありがとうございます。みなさんも流石の戦い方でした」
「いやいや、やっぱり高木くんのところのパーティは頭ひとつ抜けているよ。間違いなくもっと下の階でもいけるよ」
俺達はその後二回ほどドラゴンとの戦闘を繰り返してから別れる事になった。
「俺達は今日はここまでで引き上げます」
「おお、学校だもんな。今日は一緒に回れてよかったよ。また機会があったらよろしく頼む」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします。冬彦さん達はまだ進むんですか?」
「ああ、今日も泊まりで頑張るよ」
「頑張ってください」
やはり専業の人達はすごいな。これから更に進んだ上にダンジョンで寝泊りするのか。
それにしても今回は冬彦さん達に同行出来てラッキーだった。
ドラゴンの情報や他のパーティの戦い方も参考になったし、進むペースも早くなった。良い人達だったので、また一緒に潜れる機会があれば是非お願いしたい。
冬彦さん達がダンジョンの先に進むのを見送ってから俺達は少し引き返し、周囲に誰もいないのを確認してから『ゲートキーパー』で一階層へ戻り地上へと出た。
「いい人達だったわね」
「そうだな、パーティとしてもまとまりがあっていい感じだったな」
「そうですね。俺達も負けてられませんね」
「それじゃあ、また来週ね」
「俺は明日からはまた一階層に潜るけどね」
「海斗、頑張れよ」
初めての十七階層の探索は、冬彦さん達との出会いもありかなり順調だったと言えるが、これでまた一週間は十七階層の探索がストップするかと思うと気が焦ってしまう。
みんなと別れてから俺は一人でスーパーへと向かった。
最近土日のカレー比率が上がり過ぎているので、母親に今日は俺が肉を買って帰ると伝えておいたのだ。
焼肉かしゃぶしゃぶにしようと思うけどどっちがいいかな。
スーパーに着いてから、早速肉のコーナーへと向かう。
売り場を見ると一番に焼肉用の肉が目に飛び込んできたのでその瞬間俺の心は決まった。今日は焼肉だ。
「どれにしようかな〜」
家族三人で食べるので最低でも五百グラムは欲しいところだが五百グラムのパックを見るとちょっと少ない気がする。
かなり迷い結局少し多めの六百グラム買う事にしたが、思いの外値段に開きがある。
一番安い輸入牛肉は千円を少し超えるぐらいからあるが、見ると赤身中心でそれなりに美味しそうに見える。
次に安いのが国産牛で二千円ぐらいだ。見た感じは輸入牛肉同様に美味しそうだ。
国産牛の中でも交雑種というのがあり少しだけ値段も高いが、何と交雑しているのかよくわからない。
そして一番高いのが和牛。見るからに霜降り肉だが値段が一番安いので五千円高いものだと一万円に届く値札が貼られている。
十七年間の人生でこれほど真剣に肉を選んだのは初めてだと思う。
値段で選ぶなら輸入牛肉。見た目で選ぶなら和牛。普段ならもちろん選択肢に入ってくるが今日に限っては国産牛は除外だ。
流石に一食で一万円はきつい。
ただスーパーで売っているところを見ると、普通に一万円の肉を買っている人達がいるという事だろう。
俺が知らないだけで、人の家の食卓は俺が思っている以上に豪勢なのかもしれない。
「う〜ん……」
食肉コーナーで俺が悩んでいる側から、女の人達がどんどん肉へと手を伸ばし取っていく。
みんな多少は値段を見ている様だが俺の様に真剣に悩んでいる人は誰一人としていない。
「あっ……」
俺がじっと見ていた和牛のパックが取られていってしまった。
これ以上悩んでいる時間は無い。
俺は遂に決意を固め和牛六百グラム五千円のパックを手に取りレジへと向かった。