A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (564)
第562話 スライムの歌
学校を終えてすぐにダンジョンへと向かう。
今日からの目標は昨日までとは違う。昨日まで1階層ではスライムの魔核を集める事が第一目標となっていたが今日からはメタリックカラーのスライムを探す事が最優先だ。
「シル、前回メタリックカラーのスライムが出てから何匹ぐらい倒したか覚えてるか?」
「流石に数が多すぎてハッキリとはわかりませんが確実に四桁はいっていると思います」
「そうだよな〜。そもそも一定の確率で出現するのかも怪しいんだけどな」
とにかく平日潜れる時間は限られているので、小走りにダンジョンを駆けていく。
「お! イエロースライムだ」
俺はスライムの前まで全速力で走りすぐさま殺虫剤ブレスをお見舞いして魔核を回収した。
ベルリアにも一人でスライムを倒させてみたが色々と試した結果、あまりスライムと刀の相性は良くない。普通に斬ったのでは斬り口が鋭すぎてすぐに元の戻ってしまうので消滅までに手数と時間を要した。
実際風の魔刀では何度も斬りつける必要に迫られ、圧倒的に殺虫剤ブレスが勝っていた。
そこで炎の魔刀で突き刺し、炎の力で蒸発させる事にした。
ほぼ全身が水で出来ているスライムにとって炎は弱点なので、ベルリアにはこのパターンでスライムを弱らせる事に専念してもらっている。
効率を考えるとベルリアと交互に倒すのが一番だったが、唯一の心配はサーバントが倒したスライムの数は俺が倒した扱いになるのかどうかという事だ。
恐らくパーティで戦ったとしても戦いに参加していれば経験値的なものは、ある程度分配されているイメージなので、スライムを倒す事についても共有化されているのではと考えているが、明確な計測機があるわけではないのであくまでも推論の域を出ない。今回どうしても失敗できないので、とどめは必ず俺がする様にして戦っている。
以前はこの単調な作業にルシェが文句を言っていたが、今回は一切何も言わない。
事前に今回の事情と俺の考えを伝えておいたので流石にルシェも茶化す様な真似は控えている。
「おお! あれはピンクスライム! 結構レアカラーだ。俺がやる」
俺はピンク色のスライムに向けて殺虫剤ブレスをお見舞いして、難なく倒す事に成功したが残されたのは当然、通常のスライムの魔核が一個だけだ。
スライムには色々なカラーがあり、水色、緑色、赤色、茶色あたりはメジャーカラーだ。ただそれ以外のレアカラーのスライムを倒したとしても残される魔核は全く同種のものだ。
カラフル過ぎて保護色とは思えないので、スライムの色に何の意味があるのかは全くわからない。
淡々とスライムを狩っていくが、今日は入り口以外では、まだ他の誰とも会っていない。
最近は、1階層でたまに成りたての探索者を見かけるが、俺とは全くペースが違うので一瞬すれ違うだけだ。
「ああ〜メタリック来い。寄って来い。す、す、す〜らいむ、こっちのみ〜ずは甘いぞ」
「ご主人様、それは一体何の歌なのでしょうか? 水が甘いのですか?」
「あ〜、スライムが寄って来る歌?」
「そんな歌があるのですか?」
「まあ、たぶん……」
そんなに真剣に聞かれても困ってしまう。
気分転換というか神頼み的に口ずさんだだけなのに、言いづらい。
「シル騙されるなよ。絶対嘘だぞ。さっきのがそんな特殊効果を持っているはずはない!」
「ルシェ、ご主人様は『スライムスレイヤー』なのですから、スライムに対して特殊な能力をお持ちなのかもしれませんよ」
「ふん、どうせ思いつきで作った歌に決まってる」
俺の事を信じてくれるシルはやっぱり心のオアシスだ。
だが残念ながら今回はルシェが百パーセント正しいんだ。
出来れば今後は俺の歌やいつもと違う行動はあまり気にせずに流して欲しい。