A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (567)
第565話 後輩
昨日は春香のプレゼントも買えたし、俺は朝から機嫌良く授業を受けているが、昼休みになったのでトイレに行く事にした。
「先輩!」
あ〜今日は何を食べようかな。
今日は、パンも弁当もないから学食に行こうかな。今日の日替わりなんだろう。
「先輩、わざとですか?」
その前に早くトイレに行かないと、俺のナイル川が氾濫してしまう。
「先輩! 無視しないでください。無視するなら乱暴されたって騒ぎますよ」
「へっ?」
「ようやく反応してくれましたね。やっぱり聞こえてるのに無視してたんですね」
「ああ、この前の……いや、先輩って俺の事だとは思って無かったんだ」
「そうですか。これだけ近くで声をかけていたのにそんな事ありますか?」
「それより何か用かな?」
「ダンジョンの話を聞きたいんですけど」
「あ〜、俺トイレに急いでるからまた今度ね。じゃあ!」
この子と話し込んでいる場合じゃない。こんなところでゆっくりしていると俺のナイル川が決壊してしまう。
俺は早足でトイレへと駆け込んだ。
「ふ〜、結構危なかったな。膀胱炎になるところだった」
授業が始まってすぐ、ナイル川が暴れ始めたので、五十分近く我慢した事になる。耐え切った自分を褒めてやりたい。
無事にトイレを終えたので、急いで学食へ向かう。
出遅れてので、今日は日替わりが残っているかはちょっと怪しいな。
「先輩!」
「まだいたのか? 俺は今から学食だから、それじゃあ」
「私も学食なんで一緒に行きます」
なんだこの子は? なんで付き纏うんだよ。ダンジョンの事が聞きたいんだよな。隼人でも紹介してやろうかな。隼人ならこの子が相手なら喜んで教えてくれそうだし。
「ダンジョンの事が聞きたいんだよな。それじゃあ俺よりもうってつけの奴がクラスにいるから紹介するよ。隼人も十階層を超えてるし、親切に教えてくれるはずだぞ」
「いえ、結構です」
即答で断って来たが、この子の目的は何なんだ?
まあ、このまま学食で別れればいいか。
俺は学食まで行って日替わり定食を確認するが、残念ながら完売している。
残っているのはカレーかうどんかラーメンか……
今日はラーメンだな。
俺はラーメンの食券を買ってから、出来上がるのを待ってから受け取って、空いているテーブルに座って食べる事にする。
カレーは一昨日の夜食べたので却下だが、うどんかラーメンと言われればラーメンの方が好きだけど、学食のラーメンば残念ながらそれほど美味しくはない。
麺は茹で過ぎだし、具は蒲鉾が2切れにメンマが二本とペラペラのハムが一枚。価格が二百三十円という事を考えると文句は言えない。
「ここ空いてますか?」
「ああ、空いてますよ」
背後から女の子の声がしたので返事をしたが、隣の空いていた席に座ったのは、さっきまでのあの子だった。
「何でいるんだよ」
「それはお昼を食べるからですよ。先輩はラーメンなんですね。私はうどんです」
「ああ、そうなんだ」
「可愛い後輩がお話を聞きたいと言ってるんですから、いいじゃないですか」
「可愛い後輩ね……名前も知らないんだけど」
「私は野村理香子です。探索者に成り立ての一年生です」
やっぱりこの子は探索者なのか。
まあ十五歳から探索者になれるけど、高校生になるタイミングで探索者になる人も多いもんな。
「あ〜まあ、頑張ってね」
「先輩は今何階層に挑んでいるんですか?」
「俺? 十七階層だけど」
「十七階層ですか? さすが『黒い彗星』ですね」
「野村さん、学校ではその呼び方はやめて欲しいんだけど」
「え? どうしてですか? 探索者の勲章ともいえる二つ名じゃないですか。しかも『黒い彗星』ってちょっとカッコよくないですか?」
後輩の扱いなど慣れていない俺には、この子が、素で言っているのかそれとも俺の事をおちょくっているのか判断がつかない。