A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (572)
第570話 風竜
俺は今まで以上にトラップへと気を配りながら慎重に進んでいる。
以前組んでいたフォーメーションに戻し、ベルリアを先頭にシルを中心にしてメンバーが極力固まって進む事にした。
今の俺はドラゴン以上にトラップを警戒していた。
「ご主人様、敵モンスター三体がその先を曲がったところにいます」
「ベルリア! その位置迄にトラップはないか?」
「マイロード、おそらく大丈夫だと思います」
敵モンスターに突っ込んだ瞬間、無防備にトラップにハマる事だけは避けたい。
「ベルリアと俺で先に敵を確認。あいりさんとシルは敵の種類が確認でき次第攻撃してください」
壁に阻まれて全く敵の姿が見えないので、慎重にベルリアと俺で先に進んで行く。
通路の角まで来たので、そっと覗いてみるが十メートルほど先にドラゴン三体が見える。
かなり近いな。
姿を見る限り雷竜に近い気がするが、今まで出現した雷竜とは少し体色が違い、青みがかった色をしている。
もしかして違う種類なのだろうか?
「ベルリアどう思う? あれって雷竜か?」
「見た目は似ていますが、三体とも雷竜とは色が違うのでおそらくは違う種類かと」
「そうだよな。とりあえずここから二人で狙ってみるか」
「わかりました。お任せください」
俺達は気配を薄めているので、ドラゴンにはまだ気付かれていない。
俺は『ドラグナー』を構えて一番手前にいるドラゴンに狙いを定める。
邪魔も入らないので完全に狙いをつけた状態で『ドラグナー』の引き金を引く。
『ドラグナー』が発光し弾が射出されドラゴンの頭部に命中。
ベルリアもほぼ同じタイミングで風の魔刀で『ヘルブレイド』を放った。
風を纏った黒い刃がもう一体の竜に向けて飛んでいったが、黒い斬撃がドラゴンに命中した瞬間、ドラゴンの体表に分散して消え去った。
俺が撃ったドラゴンはそのまま消失したが、ベルリアの狙ったドラゴンはそれほどダメージを受けた気配がないが、攻撃を受けた事でこちらを認識した二体のドラゴンが猛然と突進してくる。
「シル、あいりさん、ドラゴンが二体向かってくる!」
「ベルリア一旦引くぞ!」
ベルリアの攻撃が無効化された理由がわからないのでベルリアを一旦下げる。
俺とベルリアが後方へと逃げるのとすれ違うようにシルとあいりさんが前に出る。
「早く消えてください。ご主人様の妨げになっています『神の雷撃』」
シルの雷撃がこちらに向かって来ていたうちの一体に炸裂し消滅した。
残りは一体だが、あいりさんが『アイアンボール』を発動し、鉄球がドラゴンに向けて飛んで行くが着弾する少し手前で鉄球がドラゴンの表皮を滑って後方へと流れた。
「なんで……」
ベルリアの時よりも鉄球の動きはわかりやすかった。
ドラゴンの五十センチほど手前から後方へとスルッと滑って流れた。
だけど、あの変な動きはなんだ?
ドラゴンが勢いを弱める事なくあいりさんに向かって来ているので、ミクに援護を頼む。
「ミク、足止めを頼んだぞ!」
「まかせてよ『ライトニングスピア』」
ミクはすぐさま雷の槍をドラゴンに向けて放つが、先程の鉄球のように滑る事なく命中した。
「ガハァアアア〜!」
ドラゴンがミクの攻撃による痛みで、その場に止まった。
「ベルリア! 倒すぞ!」
俺とベルリアはあいりさんと一緒にドラゴンへと駆けて行く。
接近して攻撃しようとして気がついた。
こいつは風竜だ。
ベルリアが風を纏う刀で斬ろうとしたが、表面を覆う見えない防御壁に防がれてしまった。
防がれた瞬間に見えたが、このドラゴンの体表を風が流れながら覆っている。
この風の壁に同属性である風の魔刀の一撃は防がれてしまったようだ。