A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (578)
第576話 とどめ
ルシェの獄炎が氷竜を襲う。
やはり氷竜と獄炎は相性が抜群にいいようで、見ている側から身体の表面を覆っていた氷はどんどん溶けてなくなり、剥き出しとなった外皮は獄炎によりあっという間に燃やし尽くされてしまった。
「ルシェ助かったよ」
「それよりさっさともう一体を倒せって」
「ああ、そうだな」
背中はまだ痛いが動けないほどではないので、起き上がって残りの氷竜へと攻撃を試みようとするが、すでにあいりさんが先に交戦している。
『斬鉄撃』
あいりさんの一撃が氷竜の外装を砕きダメージを与えるが、氷竜が傷みに悶えながら口を大きく開いた。
この感じは、まさかブレスか?
「あいりさん!」
さすがに至近距離からブレスをくらえばただでは済まない。
『アイアンボール』
あいりさんは、慌てる事なく冷静に氷竜の開いた口に向かって鉄球を叩き込んだ。
口の中への鉄球攻撃は、ほぼ決定打に近いダメージを与える事に成功したようだが、とどめをさすべく俺も氷竜の側面まで走って行きバルザードの刃に切断のイメージをのせて突き刺し、そのままバルザードを振り切る。
バルザードによる一撃はドラゴンの首の根本部分を大きく抉り氷竜を消滅へと追いやった。
今度はあいりさんのおかげもあり攻撃をくらう事なく倒す事ができた。
「それでは、そろそろ終わりにしましょう。あなた達がご主人様に危害を加える事はあってはならないことです。我が主人の敵を滅ぼせ神槍ラジュネイト」
たぶんあの感じだと、シルは怒ってるな。俺が氷竜に飛ばされたのを見ていたんだろう。いつもよりも力が入ってる気がする。場違いだが、俺のために怒ってくれているのを感じるので、内心少し嬉しかった。
シルの渾身の一撃はあっさりと金属竜の装甲を突破して大穴をあけ消滅へと誘った。
残る敵は一体。
「さすがに硬いですね『アクセルブースト』」
ベルリアが金属竜とやりあっているが、やはり外装の硬さに苦戦しているようだ。
ドラゴンの攻撃をほぼ完璧に避け切ってから、魔刀で斬り付けているが『アクセルブースト』以外の攻撃は、外装に傷はつけているものの深手を負わす事はできていない。
逆に『アクセルブースト』を使って斬った所は肉に達する傷を与える事ができているようで、傷口からは青い血が流れており、金属竜の動きが幾分鈍ってきているように感じる。
「そろそろグロッキーですか? 『アクセルブースト』」
ベルリアが必殺の一撃を放つが、ベルリアの一撃は寸分違わず、すでに傷のある箇所へと吸い込まれていく。
「グァアアア〜!」
「これでもまだ決まりませんか。驚異的な硬さですが、他の皆様をこれ以上お待たせするわけにはいきません。これで決めます『アクセルブースト』」
三度放たれた『アクセルブースト』による一撃が、先ほどと全く同じ箇所へと叩き込まれ、今度は肉と骨を断ち金属竜を倒す事に成功した。
「ベルリア流石だな。ルシェの時よりも早かったんじゃないか?」
「マイロードそんな事はありません。攻撃の質の差ですよ。思った以上に硬かったので多少苦労しましたが、涓滴岩を穿つです。いくら硬い装甲でも、寸分違わず同じ箇所へと攻撃を集中すれば貫く事も可能となりますが、これもマイロードからいただいたこの二刀のおかげです」
なんとなく、今日のベルリアは格好よく見えるな。
本来ベルリアは格好よく見えるだけの技量と強さを持ち合わせているはずだが、どこか抜けているのとパーティ内での立ち位置から、格好よく見える機会は思いの外少ない。