A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (579)
第577話 スモールドロップ
「海斗、さっきの戦闘で結構派手に飛ばされてたけど大丈夫なの?」
「ああ、一応大丈夫だよ。まだちょっと背中が痛いけど」
「今回はフォローできたが、数が多い時は、さっきみたいなのが致命傷になりかねないから、注意した方がいいぞ」
「そうですね。今度からは危なくなったら出し惜しみせずに即『ドラグナー』を撃つ事にします」
「それがいいだろう」
あのまま、あいりさんのフォローがなければ、起き上がる前に氷竜にやられていた可能性も十分にあった。
極力節約の為に『ドラグナー』を使わずに戦闘をすすめようとしていたが、十七階層はそう甘いものではない。
一瞬の判断を誤ると命にかかわる上に俺の脱落は他のメンバーの命にも直結している。
今回は俺の判断が遅れたせいで、みんなにも迷惑をかけるところだった。次回からは同じ轍を踏まないように気をつけたい。
俺は先に進む為に、ドラゴンを倒した場所へ行き魔核を探すが、落ちている魔核はいくら探しても三個だけだ。四体倒したので魔核は四個あるはずだが残りの一個はどこにも無く、代わりにハンカチ程度の薄い革のようなものが残されているだけだ。
「ミク、あれってもしかしてドロップアイテムかな」
「魔核が一個足りないからたぶんそうじゃない」
「あれって何?」
「……ドラゴンの革?」
「ハンカチぐらいの大きさしかないけど」
「一応拾ってみたら?」
そう言われて、ドロップアイテムと思われるハンカチ大の革のところまで歩いて行き拾ってみる。
「思ったよりも重量がある気がするけど」
拾い上げた革らしきものは、ほぼ四角に近い形をしており、よく見ると表面に爬虫類系の鱗のようなものが付いているのでドラゴンの革に間違いなさそうだが、大きさはハンカチ程度の大きさしかない。
「これ、ドラゴンの革素材だと思うんだけど買い取ってもらえるのかな」
「まあ一応ドロップアイテムだし買い取ってもらえるんじゃない」
「ああ、そんなのでもドラゴンの素材には違いない」
「これって何かに使い道あると思いますか?」
「ハード目なハンカチか財布ぐらいにはなるんじゃないか?」
「ああ、財布は良さそうですね。ヘビとかワニとかの財布がありますよね。ドラゴンの財布ってカッコいいし縁起がいい気がしますね」
「それなら海斗が使えばいいんじゃない? 売ってもあんまりお金になりそうにもないし。海斗ってどんな財布使ってたっけ」
「うん俺が今使ってるのは普通の2つ折りの財布だけど」
ドラゴン革の財布か。なんとなく響きはカッコいい気はするけど、俺のキャラクターではないような気もする。
どっちかというと武器屋のおっさんとかに似合いそうだ。
アメリカンバイクに乗ったワイルドな感じの人が、ドラゴン革の財布を取り出すといい感じかもしれないが、やっぱり俺ではない気がする。
ボス戦以外では久々のドロップアイテムだが、あまり価値を見出せなくて正直ガッカリだ。
一応マジック腹巻きにしまい込んで俺達は気を取り直して奥へと進んで行く。
「まあ、滅多に出ないドロップが出たんだから、今日の運はいいんじゃないかな」
「まあ、そうかもね」
「そうだな、前向きなのはいい事だぞ」
まあ当たり前だが、この革は、みんなハズレだと思っているのだろう。
普通革素材といえば一体分とかせめて半身分ぐらいは期待する。
だが、まだ時間は十分にあるので今日の俺達の運勢なら更なるドロップアイテムを手に入れる事もできるかもしれないので、無理やりテンションを上げて探索を続ける。