A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (597)
第594話 サンドシャーク
砂嵐の中を進んでいくが、五体の敵は見当たらない。
昨日戦ったストームドラゴンであれば、五体もいれば砂塵が濃い部分が既に見えているはずなので、おそらく違う敵だ。
だが、目に見える範囲には一体もいない。
「シル、どこにもいないけど本当に五体もいるのか?」
「間違いありません」
そうだとすれば可能性としては下か?
砂嵐でただでさえ視界が悪いのにこの状態で足下の敵とは……
「みんな足下に注意して!」
全員で足下に意識を向けるが視界の悪さと砂嵐の音もあり、俺には全く気配が掴めない。
「ベルリア! どうだ?」
「向かって来ています」
見えない敵の姿に緊張が走るが、後方のミクが声を上げる。
「前方よ! ひれみたいなのが見えてるわ!」
俺は完全に足下に集中していたので気がつく事はできなかったが、後方のミクからは全体が見えたのだろう。
俺達が一斉に前方の地面を見ると、確かに鮫のひれのような物が複数こちらに向かって移動して来ているのが見えた。
まさかの砂の中を移動する鮫か?
「シル!『鉄壁の乙女』を頼む!」
すぐに五体の地中の敵に対する術を思いつかなかったので、シルに『鉄壁の乙女』を発動してもらう。
「ミクも中へ!」
万が一に備えて後方に控えてもらう予定だったミクにも光のサークル内に避難してもらう。
徐々に大きな背びれがこちらへと向かってくる。
見えない砂の中から迫ってくる様は、有名な昔の映画さながらで、かなり怖い。
武器を構えて待ち構えるが、すぐ手前まで近づいてきた途端、足下の砂が爆ぜた。
爆ぜると同時に巨大な鮫が飛び出してきて俺達に向かって襲いかかってきたが、光のサークルに阻まれて、そのまま砂の中へと戻っていく。
鮫と言っても、本物の鮫とはかなり違う。
その姿はドラゴンのような外皮に覆われており、巨大な口からは歯というよりも牙が生えていた。
攻撃手段はその大きな牙によるもののようだが、砂から飛び出してからの動きは思った以上に素早い。
「姿を現したらルシェは『黒翼の風』を頼む」
ルシェの獄炎はスピードという点では若干劣るので『黒翼の風』を選択する。
この砂嵐のフィールドで影響を受けないかは不安要素だがやってみるしかない。
背びれが前方だけではなく後方へと回り込んできたのが見える。
どうやら前方からの攻撃が弾かれたので、取り囲んで全方位から攻撃してくるつもりかもしれない。
背びれはそのまま周遊するかのように、俺達を中心に回り始めた。
俺達はそれぞれがターゲットに定めた背びれの動きを目で追う。
しばらく目で追っていると突然、全方位の地面が一斉に爆ぜて砂鮫が襲いかかってきた。
俺は『ドラグナー』を選択して攻撃を放つが、他の五人もほぼ同時に攻撃を放った。
一瞬の攻防でしとめることができたのは五体のうちの二体。
ルシェの攻撃は心配したフィールドの影響を全く感じさせない威力で、一瞬で敵を斬り刻んだ。
そしてもう一体をしとめたのはあいりさんだ。
牙を向いた砂鮫の大きく開いた口の中に『アイアンボール』を叩き込み、瀕死の状態で砂上に落ちた鮫に薙刀でとどめをさした。
俺を含む残りの三人は、それぞれが攻撃を当てる事には成功したが、消失させるまでには至らず、ダメージを与えた状態で地中へと逃げられてしまった。
俺もしっかり狙ったつもりだが相手がドラゴンではなかったので『ドラグナー』の特性を発揮しきることができずに一発でしとめることができなかった。
ただ、敵に大ダメージを与えたのは間違いない。
次は確実にしとめる。