A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (598)
第595話 砂嵐エリア突破
残る敵は三体。
いずれの敵も大きなダメージを与える事に成功しているので、さっきまでのような勢いはない。
背びれが見えているが動きも鈍く蛇行している。
シルの雷撃ならここからでも順番に狙い撃てる気もするが、砂鮫の攻撃を待つ。
蛇行状態から瞬間的に速度を増したと思ったら、再び飛び出して襲ってきた。
今度は現れるタイミングを完全に計ることができたので、余裕を持って狙い撃つことができた。
『ドラグナー』から放たれた弾は的確に砂鮫の頭部を撃ち抜き消失させる事に成功した。
他の二体もミクとベルリアが責任を持ってしとめていた。
戦闘の終了を確認してから手早く五個の魔核を回収し先を急ぐ。
砂嵐の中ストームドラゴンや砂鮫との戦闘を数度繰り返し進んでいるが、なかなか砂嵐のエリアを抜ける事ができない。
ゴーグルのおかげでかなり負担は軽減されているが、モンスターに警戒しながら砂嵐の中を進む事でかなり体力を削られていっている。
「ミク、だいじょうぶ?」
「ええ……だいじょうぶよ」
特にメンバーの中では体力の劣るミクに疲れの色が見えるので、どこかで休憩を取りたいが、このエリアを抜けない事にはそれもままならない。
このエリアに入ってから既に一時間以上は経過していると思うが、戦っている時間もあるので思ったよりも進めていないのかもしれない。
「マイロード、もう少しでぬけるようです」
俺の目では、まだ確認できないが、視力のよいベルリアには砂嵐の終わりが見えているらしい。
「みんな頑張れ! あと少しでぬけるぞ!」
気を抜いて襲われないようにだけ注意を払い先を目指す。
「ぬけた〜! きつかったな〜」
「もう、当分砂は遠慮したいわね」
「ああ、身体中が砂だらけだよ」
一様に疲れた声をあげるが、あいりさんが言う通りメンバー全員が砂だらけだ。
全員で装備を外し、全身にかぶった砂を払い落とす。
「砂を落とすだけでもスッキリした気になるな」
「でも、髪がバサバサになっちゃったわね」
「ああ、指がスムーズに通らないな。これはしっかりトリートメントしないとまずいな」
このタイミングで髪の心配を一番にするとはさすがに二人とも女の子だな。
俺は髪の心配より少し休みたい。
「シル、周囲に敵はいるか?」
「いえ、この周囲にはいないようです」
「それじゃあ、ここで十分間休憩を取ろう」
そう言って、俺はその場に腰を下ろした。
喉も乾いたな。
俺はマジック腹巻きからミネラルウォーターを取り出して一気に半分ぐらい飲み干した。
「あぁ〜! 生き返る〜」
「さすがにちょっと疲れたわね」
「普段砂嵐を体験することなどないからな。ある意味貴重な体験かもしれない」
「あいりさんポジティブですね。俺はもううんざりですよ。普通がいいです。もう当分砂嵐は遠慮したいですね」
「そうは言っても明日また通る事になるぞ」
「あぁ……。あいりさん、ぬけたばかりでその言葉はやめて欲しかったです。気が重くなりますよ」
「これも修行の一環だと思えば辛くないものだぞ」
「あいりさん、俺は別に修行をしにきてるわけでは……」
「海斗、土遁の術の修行にいいんじゃないの?」
「ヒカリンみたいなこと言うなぁ……」
「……ヒカリンは毎日戦ってるのよね」
「そうだな」
「絶対に助けましょうね」
「ああ、もちろんだ」
「ミク大丈夫だ。私達にはシル様とルシェ様がついているんだから。おまけにアサシンまでいるんだぞ」
「そうですよね。おまけでアサシンまでいますもんね」
「ああ、ダメな要素を探す方が難しいな」
「俺はおまけですか……」
「ふふっ……そうだな。おまけだ。頼りにしてるぞ」
「はい」