A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (600)
第597話 居眠りダメ!
やっぱり歩いていても眠いものは眠い。
人間歩きながら寝たらどうなるのだろう。
バタンとその場に倒れるのだろうか? それとも寝ていても足は前に進むのか?
興味はあるが実践する気はないので、手の甲をつねって眠気を覚ます。
一瞬痛みに覚醒するが、すぐにまったりとした眠気が襲ってくる。
最近毎日ダンジョンに潜っているので、少し疲れも溜まっているのかもしれない。
眠気と戦いながら進んでいると
「マイロードお気をつけください」
「え?」
ベルリアの声が聞こえてきたが、瞬時に反応ができずにそのまま踏み込んでしまった。
『カチッ』
今までも何度か聞いたことのある音が聞こえてきた。
これはいつもルシェがやった時の音だ。
その音が聞こえてきた瞬間に俺の眠気が一気に覚めた。
「みんな逃げてくれ!」
声をあげて俺自身、その場からすぐに離脱しようとするが動けない。
よく見ると足下が微かに光っているように見える。
これは、魔法か何かで足が拘束されている。
力を込めて動こうとするがびくともしない。これはまずい。
俺は周囲に意識を向ける。普通に考えて足を拘束するだけの罠なはずはない。
動けなくなった俺に向けて何かあるはずだが、周囲には特に変化は見られない。
どういうことだ? これだけか?
「マイロード! 上です」
ベルリアの声に反応し咄嗟に上を向くと、天井の一部が俺に向かってゆっくりと下がってきていた。
ちょうど俺のいる部分をカバーするくらいのサイズ感だが、動けない以上このままいくと潰されてしまう。
必死に抜け出そうと足掻いてみるが、全く動けない。
「ベルリア! 抜けない! どうやっても抜けないんだ! どうにかしてくれ! このままだとヤバイ!」
冗談抜きでこのままだとヤバイ。潰されてしまう。
さすがにこんなところで天井に潰されて死ぬのは嫌だ。
俺はまだ春香から誕生日を祝ってもらっていないんだ! それまでは絶対に死ねない。いや、祝ってもらってからも同じ大学へ行くんだから、やっぱり死ねない!
俺の焦りとは全く関係なく徐々に天井の一部が俺との距離を詰めてくる。もう俺の頭まで一メートルもないぐらいだ。
「マイロード、しゃがんでください」
俺はベルリアの指示に従い、その場へとしゃがみ込むが、既に元々俺の頭があった位置まで迫ってきている。
まずい、まずい、まずい!
「ベルリア!」
「マイロード、お任せ下さい。最悪の場合は足を切ってでも助けて見せますのでご安心ください」
「ベルリア! それはダメだ。絶対にダメだ。それ以外の方法で頼んだぞ!」
ベルリアはまさか本気ではないと思うが、それは助けるとは言わない。俺の足は今後の探索のためにも絶対に必要だ。
そうこうしているうちにも、天井はどんどん近づいてきている。
しゃがんだ俺まで一メートルをきったところで、ベルリアが下がってきた天井の下に入り両手を突き上げて、受け止めた。
「ぐっ……これは……さすがの私でもきついですね」
ベルリアによって一時的に天井が下がってきていたのが停止した。
停止はしたがベルリアが、血管が切れるんじゃないかと思うほど全力を出して受け止めているのがわかる。
「ベルリア?」
「マイロード、もしかしたらそう長くは……」
「ベルリア!」
「ぐっ……」
これはまずい。どう考えても一時凌ぎにしかなりえない。
そもそも、普通に考えて下がってきている天井を力ずくで止める事などできるはずがない。
なぜベルリアはこの手段を選択したんだ。
もうベルリアが押し込まれるのは時間の問題に見える。
だれか! だれか助けてくれ!
このままだと俺潰れちゃう!