A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (601)
第598話 真理
「マイロード申し訳ございません。もう……」
「ベルリア! 諦めるな! 諦めたらそこで終わりだ! 諦めなければなんとかなる!」
「そう言われましても、もう……」
いよいよ、本格的にベルリアが限界を迎えてしまったようだ。
顔から滝のような汗を流し明らかに顔色が悪くなってきた。
士爵級悪魔のステータスと俺への忠誠心でどうにか食い止めていたが、どうやらそれももう潰えていまいそうだ。
ベルリアを責めることはできない。
俺の為にここまで耐えてくれたサーバントを俺は誇りに思う。
ありがとうベルリア!
だけど、なんとか頑張ってくれ! 頼む! 頑張れベルリア!
絶体絶命ともいえる状況の中、シルという本物の女神によって俺に一筋の光がてらされた。
「ご主人様、もしよろしければ私が、ベルリアが支えているそれを壊しましょうか?」
「シル! できるのか?」
「もちろんできますが、ベルリアも頑張っているようだったので、ご主人様とベルリアの邪魔になるかもと思い控えていたのです」
「邪魔じゃない。今すぐ頼む! もう時間がないんだ。ベルリアも限界だから」
「わかりました。それではいきますね。我が敵を穿て神槍ラジュネイト!」
神槍が光りシルの渾身の一撃がベルリアを押しつぶそうとしていた天井の一部を大きく抉り取った。
「姫……助かりました。さすがです。このベルリア姫に命を救われました。シル姫の為ならこの命!」
どうやら抉り取られたトラップはそれ以上迫ってくる事はなくベルリアも完全に解放されたようだ。
俺の足を拘束していたものも同時に解除されたようで、普通に歩けるようになったので、念のためにすぐその場から離れる。
「シル助かったよ。ベルリアもありがとうな」
「マイロードお役に立てて本望です」
「ご主人様にお怪我がなくてよかったです」
あ〜俺はサーバントに恵まれているな〜。いつも俺を助けてくれる。やはり持つべきものは献身的なサーバントだな。
「なにボケっとしてるんだよ! 寝てるんじゃないのか? こんな見え見えのトラップにかかるなんてありえないだろ!」
ああ……俺には献身的ではないサーバントがもう一人いたんだった。
ルシェお前だけには言われたくない。
今まで何度もお前がトラップにかかったせいで、どれだけ俺が被害を受けてきたと思っているんだ。
しかも今回もルシェだけは何もしていない。
ルシェ! サーバントとしての役目を果たしてくれ。なんで主人である俺を一切助けようとしないんだ。
いずれにしても、今の出来事で俺の眠気は完全に吹き飛んだ。
やはりダンジョンでは一瞬の油断が命取りだ。間違っても今日はもうトラップにかかるようなミスは起こさないと心に誓う。
「海斗、海斗ってよくトラップにハマってるわね。でも無事でよかったわ」
「ああ……ありがとう」
確かに俺は、ほかのメンバーに比べてトラップによる被害を多く受けている。
だけど俺自身がトラップにハマったのはこれが初めてかもしれない。
みんな勘違いをしているようだが、被害を受けているだけで俺がトラップにハマったんじゃない。
ほとんどがルシェがトラップにハマっているんだ!
「海斗、危なかったな。砂地エリアにはなかったようだが、やはりこの階層はトラップが多いようだ。急ぐ気持ちもわかるが慎重にいこう」
「はい、ありがとうございます」
あいりさんは、俺が急いだせいで俺がトラップにハマったと思っているようだが、もちろん真実は違う。
居眠りが原因だ……
居眠りダメ。ゼッタイ。
居眠りするなら探索するな! 探索するなら居眠りするな!
これが今回の経験から俺が導き出したダンジョン探索における真理だ。